公益社団法人 東京都教職員互助会

文字サイズ変更
トップページ > 教育振興事業 > 平成22年度 助成グループ 研究テーマ > 「新宿☆理科と宇宙の学校」 > 「新宿☆理科と宇宙の学校」(研究成果報告)

教育研究グループ支援(研究成果報告)

研究の概要

昨年度は新宿区立新宿中学校を会場として、親子で実験やものづくりを行った。親子40組で募集を行ったが、都内他区市、埼玉県や横浜市からの申し込みもあった。応募数が多く熱心で、なかなか断ることができず最終的に親子124組の参加となった。休日の学校で実施することや、スタッフの人数を多くすることで参加者増に対処した。そのときの経験を生かし、今年度は新宿区立コズミックセンターを会場として、親子で一緒に体験活動を行う「新宿☆宇宙の学校」を実施した。
「新宿☆宇宙の学校は」4回のスクーリングとJAXAのテキストを利用した家庭学習によって、自然や生き物、科学的な事象に対する興味の芽を育て、将来宇宙飛行士を目指すようなこどもたちを育てることをねらいとしたものである。昨年度の募集活動に対する負担が大きいことがあり、またより効果的に広報活動をするには公共機関と連携することが望ましいと考え、今年度から募集及び会場は公益財団法人新宿未来創造財団が行った。運営はシリウスの会が担当することで春先に募集をしたところ、多くの参加希望者があり、抽選によってAコース(午前)親子30組 Bコース(午後)親子30組が選ばれた。もっと多くの受講者を選んであげたかったが、公共施設を使っての実施であること、無理をして混乱を招くようなことがあってはならないこと、会場の大きさに制約があることを考えると、止むを得なかったと思われる。
内容は以下のとおりである。

9/11(土)開校式、講演「はやぶさ」と「宇宙の学校」

この日は第1回目であり、開校式と的川泰宣氏による記念講演を行った。的川氏はJAXAの技術参与を務め、子ども・宇宙・未来の会の会長でもある。大変お忙しい方であり、国内だけでなく海外での講演が多数予定されている中で実施された講演だった。小惑星イトカワの解明を目的に開発された日本の探査機「はやぶさ」が地球を飛び立ち、宇宙を旅した後、幾多の困難にも負けず地球に帰還するまでのストーリーをわかりやすく説明してくださった。

 

続いて筑波大学附属視覚特別支援学校の柴田教諭は、この日の夜8時過ぎに打ち上げ予定の準天頂衛星「みちびき」や夜空に見えるISSの軌道、観望できる金星についてなど、興味深い話と工作を行った。

 

午後の部では、新宿区立西戸山中学校の新田教諭が講師となった。工作が終わったあとマグネットを使って、金星が明け方と夕方しか見えない理由など、宇宙に関する高度な内容も含めて子どもたちにわかりやすく説明した。活動後は必ず講師と補助にあたるスタッフが反省会を行い、互いに意見交換をしながら次回の開催にむけてよりよい方法を検討しあった。


10/23(土)鏡の世界、紋きり遊び、万華鏡をつくろう

この日は、新宿区理科支援員の須田教諭(元新宿区立牛込第一中学校教諭)と東京理科大学の赤塚さん(学部4年生)が「鏡の世界」及び「万華鏡をつくろう」の講師を勤め、あわせて「紋きり遊び」の講師を新宿区理科支援員の茂木教諭が担当した。

はじめに日常生活の中で見られる、反射の法則が関係する事象を例に、鏡の性質をかんたんに実験した。2枚の鏡を角度を変えて立て、その前に物体を置くとその物体は鏡を通してどう見えるかを親子で調べさせた。鏡を立てる角度によって見え方が異なることや、見え方と角度の間には一定の法則があることが短時間に理解できたと思う。その後、覗いた事はあるが買った事がない、もちろん作った事もないという教材、「万華鏡」を親子で楽しそうに作ってもらった。この万華鏡は、須田教諭が独自に開発した短時間で簡単に製作できる大変優れたものである。3枚のスライドガラスを黒のビニールテープで固定するだけの簡易なものであるが、そのできばえにはスタッフとして手伝っていた他の教師からも感嘆の声が上がるほどだった。講師としてこの活動に加わるそれぞれの教員は、この活動にやりがいを感じてくれるが、それはそれまでの経験を生かしたこうした新たな教材開発に取り組むからともいえる。そしてこうした教材に若手教員が直に触れ、触発されることができることも、この研究の最大の利点である。

11/27(土)かさ袋ロケットを作って飛ばそう、ストローロケットを作って飛ばそう

第3回目のこの日は、広い体育館を使って、ロケットを飛ばす活動を行った。かさ袋ロケットの製作には新宿区立落合中学校の関口教諭が、ストローロケットの製作には新宿区立西早稲田中学校の徳永教諭が講師として子どもたちの前に立った。かさ袋ロケットとは、ビニールのかさ袋に空気を入れて丸め、おもりとフィンをとりつけて投げるようにして飛ばす教材である。簡単に製作でき、力のない小さな子どもでも遠くまで飛ばすことができるので優れている。ストローロケットは、ストローにおもりとフィンをつけて空気入れの先にセットし、空気入れで空気を押し出すことで飛ばすロケットである。思ったよりも遠くへ飛ぶので誰でも驚く。この2種類のロケットを飛ばす活動を通して、天空や宇宙への興味・関心を高めることをねらった。子どもたちだけでなく、大人である親のほうが夢中になって飛ばす姿があちこちで見られた。

 

12/18(土)熱気球をあげよう、家庭学習レポート発表、閉校式

最終回となるこの日は、ふたたび柴田教諭が講師となって皆既月食の話題を取り上げた。その後グループに分かれて熱気球づくりに取り組んだ。うすいビニール袋を切って広げ、つないで大きくした後まるめて一枚の袋にしていく。この袋に熱風を入れて浮かせるのである。うすいビニール袋をきれいに貼っていく作業が大変だが、たくさんの手で押さえながら進めていく工程には親子の共同作業が必要である。こうした親や他の人との協力性を養えるようにこのプログラムは工夫されている。
 

家庭学習レポート発表会では、自宅で行った実験レポートを子どもたちだけ一人で発表させた。親はきちんと話せるか、周りの子に比べて見劣りしないかと心配していたが、子どもたちは拙いながらも見事に一人一人が立派に発表を行った。こうした幼児期から自らの体験をまとめ発表するという経験は、きっと自信となって身につき「学び」への意欲を高めていくだろう。親がわが子の成長に目を見張る様子からもこの活動の有効性が確かめられた。それは以下に示す親子で行った家庭学習レポートの記録からもうかがえる。
 

閉校式では、どの子の顔にも満足感があふれており、充実した4日間だったことがよくわかった。参加者からは「ぜひ来年度も継続して実施してほしい」「次回もぜひ参加したい」「先生方の熱意がよく伝わってきた。運営はたいへんだろうがやめないでほしい」等の意見をいただいた。今後の参考にしていきたい。
課題としては第1に、講師及びスタッフの確保である。休日の開催であり毎回の参加となると負担感が大きくなってしまう。適度に役割分担をし無理のない範囲で運営に携わることが長く続けられることにつながると思われる。第2に運営会場である。教室や体育館、グラウンドなど広い施設に物品も完備しているので、学校で行うことが最も適しているが、毎回同じ学校で行うことは難しい。公共施設は火を使えないなどの制約があることが多く、一長一短である。第3に広報、募集活動である。これは一日だけの仕事ではなく、何日間にもわたる仕事であり諸機関との情報交換や連絡に忙殺される。こうした点を解決し活動を成功させるためには相当の使命感と連携力を必要とする。幸いシリウスの会は高い意欲をもったメンバーばかりなので、新しいメンバーを加えながら今後も継続して取り組んでいきたいと考えている。

このページのトップへ