公益社団法人 東京都教職員互助会

文字サイズ変更
トップページ > 教育振興事業 > 平成22年度 助成グループ 研究テーマ > 外国につながる生徒の高校進学研究 >外国につながる生徒の高校進学研究

教育研究グループ支援(研究成果報告)

研究の概要

外国につながる生徒の高校進学研究

1 国際化する日本社会と東京

現在、日本社会に定住する外国人が増加している。法務省の統計によれば、日本全国における外国人登録数はすでに218万人を越え「長期的には増加傾向にある」とされる。外国人の受け入れは日本の多くの産業分野で進展し、その家族の定住化も顕著である。また日本人と外国人との国際結婚も増加し、国籍は日本でも、外国につながりのある子どもたちが増加している。

このような状況は、日本の社会が着実に欧米諸国と同様に、外国人の受け入れがすすみ、多文化共生社会が到来していることを意味している。

一方、東京都における外国人登録数は、2010(平成22)年4月にはついに41万人を超え、人口の約3%に到達し、全国第1位となっていることも注目できる。

2 都内の外国人児童・生徒と日本語指導が必要な生徒

都内の公立学校における外国人(外国籍)児童・生徒と日本語指導が必要な生徒について、公立学校統計調査(平成22年度)によれば、小学生:5,480名、中学生:2,870名、高校生:1,152名(全日制722名、定時制・通信制430名)、合計9,502名である。

また東京都内の「日本語指導を必要とする外国人児童・生徒」は、小学生:1,216名、中学生:798名、高校生:180名、中等教育学校:3名、計2,203名であり、愛知、静岡、神奈川に次ぎ第4位である(平成20年文科省調査)ことがわかる。

3 外国人(外国籍)生徒の高校進学について

外国人(外国籍)生徒の高校進学について、公立学校基本調査(平成22年)によれば、高校進学率はおよそ40%である。
これは都立高等学校に在籍している外国人(外国籍)生徒数を、都内の公立中学校に在籍している外国人(外国籍)生徒数で割った数字である。私立高校に進学する生徒は除いているため正確な数字ではないが、およその数字となる。この数字に注目したい。
東京都の「平成22年度公立中学校卒業者(平成23年3月卒業)の進路状況調査」によれば、「平成23年3月に都内公立中学校(都立中学校を含む633校)の卒業者の高等学校等進学率は97.63%で、前年度97.48%に比べ0.15ポイント増加し、過去最高となった」。
このように、日本人生徒の高校進学率に比べて外国人(外国籍)生徒の高校進学率は半分以下の数字となっている。ここで注意したいのは、統計上の外国人生徒とは外国籍の生徒のみを対象としており、近年増加している日本人の父親を持つ日本国籍の生徒や、来日して日本国籍を取得した生徒たちはこの数字に含まれていない点である。

では高校進学率のこの差異はどこにあるのか。
理由はさまざまあげられる。外国人児童・生徒及び日本語指導が必要な生徒と家族が日本の教育制度や高校入試等についての情報にアクセスすることができないこと、日本語の力が不足していること、中学校等での支援が不足していること、などがあげられる。
どこの高校に入学できるのか、高校入試のためにはどのような勉強と準備が必要なのか、高校へ進学するための情報はどこで得られるのか、高校卒業することでどのような進路が選択できるのか等の情報は生徒たちにとって貴重である。

4 高校進学相談の実態から

東京都内で「日本語を母語としない親子のための高校進学ガイダンス」がボランティアや中学、高校の教職員たちによって取り組まれている。
このガイダンスでは、都内の高校進学に向けての最低限度の知識や日本の教育制度、高校進学の意義などについて関心や理解を深めてもらうことを目的としている。昨年度は、300名を越える参加者があり、日本語を母語としない親子がいかに都立高校や都内の私立高校に関する情報を必要としているのかがよくわかった。このガイダンスでの、参加者の声(2009年)を紹介してみたい。

このように相談内容はさまざまであり、日本での悩みも多いが、高校進学の熱意が感じられる。

5 今後に向けて

文部科学省は「外国人児童生徒教育の充実方策について(報告)」(2008年)を出し、「定住外国人の子どもの教育等に関する政策懇談会」(2009年)が設置され、「高等学校への受入れについては、定時制、通信制の活用も含め、日本語指導をはじめ、幅広い受入れ環境の整備を支援するとともに、就業体験などのキャリア教育を推進」することを求めている。
この方針を教育行政、地方自治体がどのように実現できるのかが課題である。
多文化共生社会の到来にあたり、今後の学校教育の在り方についてさまざま考えさせられる研究であった。

このページのトップへ