公益社団法人 東京都教職員互助会

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教育研究グループ支援(研究成果報告)

研究の概要

都立高校における外国につながる生徒の教育の現状と課題

都立小山台高等学校  角田 仁

問題の所在

日本全国の 外国人登録者数は、2,078,480人(2011/平成23年12月末現在、法務省)である。リーマンショックや東北大震災等の影響によりやや減少しているが、依然として200万人を超えている。一方東京都の外国人登録者数は(2010/平成22年10月、東京都総務局)421,695人であり、その内訳は中国が162,635人 (38.6%)第1位で、韓国・朝鮮 115,845人 (27.5%)が第2位、次がフィリピン30,722人 (7.3%)である。

都立高校において外国につながる生徒の実態は、東京都教育委員会によれば、都立高校に通う「外国籍」の生徒は、1,223人(全日制734人、定時制489人)である(2011年5月1日現在)。さらに隔年で文部科学省が実施している、「日本語指導が必要な外国人児童生徒の受け入れ状況等に関する調査」(2010/平成22年度)では、都立高校317人(全国2位、第1位:神奈川382人)、43校である。都立高校において「外国籍」生徒数が1,000名を超えており、なかでも都立定時制高校に集中していることがわかる。

外国につながる生徒の受け入れの実際と課題

都立高校、なかでも定時制高校は日本語支援の必要な外国につながる多くの生徒が多く在籍している。ある定時制高校では、全校生徒約200名の内20%、つまり5人に一人が外国につながる生徒である。出身の国と地域は15ヶ国に及んでいる。このため日本語支援の取り組みとして教科の「取り出し授業」を国語科、地歴科、理科で実施している。時間数は1年生が週5時間である。また正規の授業のほかに、授業前と放課後にそれぞれ週2日、大学院生と退職教職員によるボランティアの補習を開講している。この高校の外国につながる生徒たちは、地域の複数の日本語支援のNPO等、難民事業本部、夜間中学などから生徒が入学してくる。このような場所で支援を受けてきた生徒はすでに日本語の勉強をしていたので、高校入学後も勉強についていくことができる。しかし中学校での支援があまりなかった生徒、外国からきたばかりで直接高校に入学してくる生徒たちは、日本語を勉強する機会があまりなかったため、高校での勉強に苦労している生徒がいる。

またこのような生徒たちは、自分の意志で勉学のために来日したいわゆる留学生とは異なっており、そのほとんどが、国際結婚等での家族の事情、あるいは親(保護者)の仕事の関係、さらに母国から避難してきた難民家族など本人の意志と関わりなく来日してきた生徒たちである。このため中学、あるいは高校入学後も勉強への意欲に課題のある生徒も見られる。このため生徒本人への勉強以外の教育的支援が必要である。具体的には担任の相談活動が重要であるが、カウンセラーやスクール・ソーシャル・ワーカー、児童相談所のケースワーカー、大学生等によって構成されているNPO等(たとえばカタリバ)との協力も得られることが望ましい。

課題の解決と今後の展望

都立A定時制高校では、外国につながる生徒の中退率は40%であった。このため学校だけで中退防止に取り組むことは限界がある。都立B定時制高校では、大学院生による相談活動を放課後や休み時間に開始した。週1回、生徒の相談にのり、担任に生徒の状況や課題について報告してもらい、協力して生徒の支援に取り組んでいる。あるフィリピン出身の生徒が、保護者の事情で住む家がなくなったケースの場合、自立援助ホームを探すことで、生徒の生活を安定させ、高校中退を未然に防止することができた。

とはいえ外国につながる生徒の課題は山積である。高校を卒業し、進路を決める際に、日本語やコミュニケーションの力に課題があるため、就職試験や進学受験などで不利益になるため、授業の「取り出し授業」のように、進路指導も個別な指導が必要である。またハローワークや大学、専門学校と積極的に連携することも求められている。

さらにこのような課題は広く社会的に知られ、政府や経済団体等の新たな施策として日本社会全体で実施されることが望ましい。

まとめ

都立高校における外国につながる生徒の増加に伴う課題の解決は、学校と関係機関、地域との協力関係が必要であることが再確認できた。このためには、さらに研究が深められるとともに、教育実践の共有が大切である。

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