公益社団法人 東京都教職員互助会

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外部人材活用事例の紹介-ボランティアの実践報告-

特別な教育ニーズを有する子ども達への支援

小金井市立前原小学校
ボランティア 近藤 立男

1.学校の概要

学校名 小金井市立前原小学校
校 長 永井 富美子
学級数

18学級 
児童数 571名 教員関係は非常勤講師を含め 33名、他に事務、給食調理員、スクールカウンセラー等、シニアサポーター1名。

学校の特色

創立47年目で、近くには緑豊な都立武蔵野公園があり、校庭の下を国分寺崖線から湧出する水から成る野川が流れるという自然環境に恵まれた学校である。このようなすばらしい自然環境のもとに、「やさしさ、かしこさ、たくましさ」のキーワードのもとに「一人ひとりが輝く元気な学校」の創立を目指して、特色ある教育活動を展開している。  

2.学校支援活動への期待

本校では本来なら、通常学級以外の学校へ行くことが考えられていた児童が保護者の都合等で本校に多く通学しており、退職教員等ボランティアに強い期待を寄せている。
また、保護者の多くも支援活動の必要性を望んでおり、自らも支援活動に進んで参加している者も増えている。

3.ボランティアの活動対象

学習の遅れ:2年男子2名と1年男子1名 、その他適宜循環して指導に当たる。

B

理科室で実験指導補助、校外指導の引率補助等。

C

1年男子(J君)ひらがな指導、算数指導、生活指導

D 1年男子の学級担任の指導。

Cの1年男子(J君)を主な指導の対象とすることとし、必要に応じてできることは何でも引き受けることとした。<活動報告対象児

4.支援活動を支える学校体制

特別支援教育担当の先生、市のカウンセラー(週2日)、都のカウンセラー(週1日)
担任には、日々報告、相談した。また校長先生、副校長先生をまじえての報告、意見交換等はボランティアにとっては大変ありがたく、日々の活動に役立つこと大であった。

5.活動記録とその活用

毎時間毎の活動記録をとり、必要に応じて校長先生、副校長先生並びに担任に見せ、保護者との連携を蜜にした。

6.活動内容

活動対象CのJ君

1年男子(J君)で、あ、い、う、え、お等の耳から入るひらがなは発音でき、おぼえることはできるが、書くことが苦手である。「あ」と「お」、「わ」と「ね」等の似ている文字は区別できない。もちろん、書くことはなおさらできない。あ、い、う、え、お、と読めても「お」だけを取り出して読ませると、読めない。したがって文意は理解できない状態である。はや2学期も終わりの11月である。運動は得意で、友達との付き合いはよく、好かれており、生活力はあるが授業中に先生の話しを聞こうとせず、手遊びをし、落ち着きがない。授業に参加できずに立ち歩き、学習ができないことが多い。ひとり親家庭で、帰りの遅い母親を待ち、寝るのが遅く、授業中に顔を伏せてしまうこともある。遅刻が多い

私のとった2方針

授業中は側にすわり、先生の指示に従って学習できるよう指導補助を続けた。当初は自分がマークされていることに、抵抗が見られたが、保護者の了解のもとで辛抱強く指導を続けた結果、抵抗はなくなり、先生、「ちょ」ってどうかくの?などと自分から聞いてくるようになった。

取り出し授業の開始

J君は次第に心をひらいてはきたが、ひらがな、漢字を憶える事ができない。その原因として、(1)くりかえし学習することが充分でない。(2)読む、書くことへの理解力がやや劣る。そこで「取り出し授業」を保護者の了解のもとで行うことにした。

取り出し授業

取り出し授業スマイルルーム(教育相室)での1対1の指導。先生、こままわししよう!とポケットから、手作りのどんぐりこまを取り出し見事な手さばきを披露する。しばらくお付き合いの後は真剣に取り組んでくる。学習に集中できるのはわずか15分の間だが,この繰り返しがベストのように感じた。

取り出し授業かなでルームでは児童が数珠作りに熱中している。この教室での取り出し授業では、J君は「先生、かくれんぼしよう、後で勉強頑張るから!」ときた。カウンセラーの先生も付き合うことも必要ですとのアドバイス。カーテンのかげにかくれたり、久しぶりに童心に返っての奮闘である。

教材の工夫

取り出し授業の中で、使用する教材の大事さを痛感した。そこで、教科書の他に、小学1年生用の雑誌から、興味を引きそうな内容の問題を選び使用した。またカルタも選んで準備し活用した。地道な学習ができにくい児童には「工夫」が欠かせない。

再び教室授業へ

取り出し授業を行う一方、教室授業の中で学級の一員としての意識を高めることが、学習の向上には欠かせない。クラスの友達とのいろいろな接触のなかで自分の存在感が意識され、向上心が高まる。事前に担任と打ち合わせた後、J君が答えられそうな場で私が担任にサインを送った。J君の大好きな担任の先生に指名され、正解で賞賛されたときのJ君の顔は喜びであふれていた。クラスメイト全員が一斉に拍手をあびせた。教師は演技者たれ!である。

頑張れJ君

担任へのアドバイス

授業時の「間の取り方、」、「注意の与え方」、「集中のさせ方」、「学習時の児童の姿勢」
その他について、率直に話し合った。

あっぱれ担任の先生!

シニアサーポータとして赴任した11月当初J君は月に14日も遅刻していたが、1月には8日、3月には6日、4月には2日、そして5月にはついに0日となった。授業中の立ち歩きもなくなり、以前よりも熱心に先生の話しに耳を傾けるようになってきた。まだ、教科書をすらすら読み文意を充分に捉えるまでにはなっていないが、ひらがなが読め漢字も少しは書けるようになった。大好きな担任の先生とクラスメイトに囲まれ、学級の一員としての存在感を感じ始めてきている。担任の先生の辛抱強さ、頑張りに感謝したい。校長先生から先生の存在は大きいですとのお言葉を頂戴した。

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