公益社団法人東京都教職員互助会 三楽病院

診療科

整形外科Orthopaedics

専門治療・診療実績

治療・手術方法

1.脊椎疾患

脊椎疾患の治療法には、薬による治療、理学運動療法、トリガーポイント注射、硬膜外ブロックなどの保存的治療(手術以外の治療)と、手術的治療とがあります。当科では手術を目的として紹介来院なさる患者さんが多く、手術的治療に主眼を置き、難易度の高い手術でも良好な成績をあげられるよう努力しています。

❶保存的治療

薬物療法やトリガーポイント注射は外来で行い、硬膜外ブロックは1日入院(ブロック後1~2時間病室で安静にし下肢の運動が回復してから退院)で行っています。効果がない場合は2週間の入院で毎日の点滴と週2回の硬膜外ブロックを行う集中治療を行っています。

❷手術的治療

神経除圧術と脊椎固定術があります。

❸神経除圧術

骨、椎間板、靱帯などによる脊髄・神経の圧迫を除去する手術で、脊椎固定術は骨(通常腸骨という骨盤の骨から採骨)を移植して脊椎を固定する手術です。それぞれ後方から行う後方手術と前方から行う前方手術があり、その両方を行う場合もあります(前後合併手術)。脊椎固定術はほとんどの場合神経除圧術と組み合わせて行います。

神経除圧術には頸椎の椎弓形成術(後方の骨を観音開きにして脊柱管を拡大する手術)、胸椎の椎弓切除術(後方より椎弓を切除して脊髄を除圧する手術)、腰椎の椎間板切除術(後方から神経をよけてヘルニアを取り去る手術)や椎弓切除術(全切除や部分切除)があります。

神経除圧術では低侵襲手術を行っています。低侵襲手術は小さな皮膚切開で行う手術で、手術用拡大鏡や顕微鏡を用いるものと内視鏡を用いるものとがあります。前者では約3cm、後者では2cm程度の皮膚切開になります。展開が小さい分だけ視野が狭く操作範囲にも制限があるため、合併症を起こしやすくなります。とくに内視鏡は二次元の画像のため立体視ができず手技に習熟を要します。諸研究では両者で臨床成績に差はないとされており、難しい症例は避けてあまり無理をしないことが肝要と考えます。当科では内視鏡の手術は腰椎椎間板ヘルニアや単純な狭窄症に絞って行っております。再発ヘルニアや高度の狭窄など難易度の高い除圧術には安全性を重視し、特殊ヘッドライトと手術用拡大鏡を用いた低侵襲手術を行って良い成績を上げています。いずれも翌日からコルセットをつけて歩行器にて歩行開始となります。

❹脊椎固定術

頸椎の前方除圧固定術(前方より椎間板ヘルニアや骨棘や靱帯骨化を取り除き骨を移植する手術)、胸椎の前方除圧固定術(肋骨を一部切除し開胸して行います)、腰椎の椎体間固定術(前方から除圧固定を行う方法(ALIF)と後方から神経をよけて椎間板を切除し骨移植する方法(PLIF)などがあります。

脊椎固定術には骨を移植するのみの従来の手術と、骨を移植するとともに金属(当科ではすべてチタン)のネジやフックで脊椎をとめる脊椎インストゥルメンテーションとよばれる手術とがあります。脊椎インストゥルメンテーション手術は当科で最も多く行われています。脊椎インストゥルメンテーション手術の必要な患者さんには、1泊2日(15時入院、翌日午前中に退院)のオリエンテーション入院を行い、夕方~夜にご家族も含めて手術のやり方、有効性とリスク、術前の準備、入院期間、術後の経過などの説明を行い、同意をいただいて(インフォームドコンセント)から手術を予定します。

2.一般整形外科疾患

種々の骨関節疾患に対する手術を行っていますが、全ての手術において、骨軟骨、筋肉、神経、皮膚に対する極めて愛護的な操作を行うように努めています。このことが、術後の美しい創瘢痕、創感染予防、術後の痛みの無い優れた運動機能を得るために大切なものであると考えております。

外傷では様々な部位の骨折に対し、プレート、ワイヤー、髄内釘、創外固定などを用いた観血整復内固定術を行っています。高齢者の四肢骨折に対しては、早期手術と早期リハビリテーションにより、できるだけ受傷前の状態に戻れるように治療を行っています。通常、股関節周辺の骨折においては術後数日以内に立位歩行動作を開始、4~6週間で歩行できる状態となって退院することを標準的なゴールとしています。

❶関節疾患

特に変形性股関節症および変形性膝関節症の診療に力を入れています。体重コントロールと関節可動域訓練や周囲筋強化などの保存治療の他、薬物内服や関節注射を行います。関節軟骨の摩耗消失に至った末期関節症には人工関節置換術を行います。通常2-3週間程度の入院により、手術とその後のリハビリを終えて自宅に帰ることが出来ます。術後の臥床期間は短く、通常は手術の翌日~2日目までにはベッドを離れて、車椅子移動や起立訓練を行います。入院前の外来通院時期にご自分の血液を400ml(両側手術の場合は800ml)程度を採血して保存しておいて手術の後に使用する、いわゆる自己血輸血を実施しております。これにより輸血後肝炎などのリスクをなくしています。また手術部位の感染や下肢循環障害・肺梗塞などの合併症を起こさないために最大限の予防策をしています。

❷手外科疾患

腱鞘炎、手根管症候群、母指CM関節症などの慢性疾患に対し、高度な専門知識の元、ストレッチ指導、装具やステロイド注射による保存加療を行っています。保存治療がうまくいかない、疼痛や可動域制限が強くて日常生活に悪影響が強い方に関しては、手術加療を行っています。腱鞘炎や手根管症候群など局所麻酔での手術が可能な方には、日帰り手術を行っており、術後の処置や抜糸も外来で行えるように工夫しています。また、橈骨遠位端骨折や舟状骨骨折などの外傷に対しても、必要に応じてギプス固定や手術加療など、最新の知見に沿った治療を行っております。

❸スポーツ整形外科

運動中などの膝の怪我により、前十字靭帯が断裂すると、以後運動の際に膝の不安定を感じるようになります。運動だけでなく、歩行や階段の昇り降りなどの日常生活動作でも膝の不安定を感じる方もいます。また、前十字靭帯の断裂を長期間放置しておくと、半月板という膝関節内のクッションが損傷し、活動量の多い方では関節の変形が進行します。前十字靭帯再建術は関節鏡を用いてハムストリングスや骨付き膝蓋腱というグラフトを患者さんの背景に応じて採取して移植・固定しております。半月板を損傷した場合、膝の中で引っ掛かりが生じたり、場合によっては損傷した半月板が関節内に挟まって曲げ伸ばしが困難になる場合もあります。

アキレス腱断裂は急性期(受傷後間もない時期)の場合、2-3cmの創で縫合する術式で行っております。また陳旧性(受傷後しばらくの期間放置された症例)や他院で手術を行って再断裂した症例にも対応しています。

得意な分野

当科の最大の特色は脊椎インストゥルメンテーション手術を得意分野とし、日本でも有数の経験を持っていることで、これにより治療の難しい種々の重症脊椎疾患を積極的に治療し、良い成績を上げていることです。

1.脊椎疾患 詳しく見る

脊椎インストゥルメンテーション手術とは、脊椎に金属のスクリュー(ネジ)やフック(鉤状の部品)を取り付け、これを金属のロッド(棒)やプレート(板)に締結して固定する手術のことで、高度の専門知識と最先端の技術が必要です。しかし変形の矯正と術直後からの強固な固定が得られるため非常に有効で、脊椎の変形や不安定性が強い例、特に最近増加する高齢者の脊柱変形を伴う腰部脊柱管狭窄症や、骨粗鬆症性圧迫・破裂骨折で後弯をきたした例の治療には不可欠の治療法です。

最近のインストゥルメントの進歩は著しく、脊椎の外傷(骨折や脱臼)をはじめ、側弯症や後弯症、分離症、すべり症(前後にずれる病気)、側方すべり症 などの脊椎変形疾患(背骨の変形をきたす病気)、脊椎腫瘍や感染性脊椎炎、高度で広範囲な脊柱管狭窄症、不安定症、高度の椎間板ヘルニアなどの脊椎変性疾患(加齢に基づく病気)など多くの重症脊椎疾患に用いられます。これらの手術は、神経の本幹である脊髄を圧迫している骨を削ったり、脊椎を切って向きを変えたり、スクリューやフックを入れて矯正するため、技術的にも大変難しいものです。

当科では開発初期からこの手術にたずさわり、現在手術症例数2500例以上で、日本最多の経験を持ち、医師や看護師(特に手術部)は日々進歩するインストゥルメンテーション手術の十分な知識と技術の修練を積み、非常に難易度の高い手術をスムースに行っております。

脊椎疾患に関しては、他施設からの紹介患者さんが大変多いのが特徴で、その中には他施設で手術を受けたが改善しなかったり、症状が再発したりした方なども多くみられます。再手術は神経周囲の癒着が強く、これらを十分はがして脊椎を再建するには、極めて高度の技術を必要とします。また当科で手術を受けられた患者さんからの紹介で来院する患者さんも多くみえています。その中には激しい腰背部痛、下肢の麻痺、膀胱・直腸障害(尿や便がもれる)のため寝たきりとなっている方などもおられます。

脊椎(骨)は脊髄(神経)に隣接しているため、脊椎疾患では急速に進行して脊髄麻痺を起こし、救急手術を要する状態になることもあります。また手術後に重篤な合併症を起こすこともあり、それらの予防と対処を必要とするため、経験の豊富な専門病院でないと手術治療は困難です。その意味でも脊椎治療の中心的役割を果たすべく努力しています。

2.一般整形外科疾患 詳しく見る

関節疾患(股関節、膝関節)、手外科疾患、スポーツ整形外科疾患に専門的加療を行っております。

最近の状況

脊椎疾患の増加

最近当科での脊椎手術の数は非常に増えています。他院からご紹介いただいた患者さんが多く、高齢者の脊柱管狭窄症でしかも側弯(背骨・腰骨が横に曲がる)変形、や後弯(前に曲がる)変形を合併し、腰痛と下肢痛、歩行障害の強い方、骨粗鬆症のため圧迫骨折(脊椎がつぶれて後弯変形を起こす)や破裂骨折(つぶれた骨が後ろへ飛び出し脊髄を圧迫する)を起こし、激しい腰背部痛、下肢の麻痺、膀胱・直腸障害(尿や便がもれる)のため寝たきりとなっている方などが多く早急な手術が必要となります。月曜・水曜は3-6時間の大きな手術が2つずつ、金曜は午後から1つ、金曜の午前は1-2時間の手術を1つ、臨時手術として木曜日の午後(外来の後)にも行っています。かなりのハードワークですが、極力手術を先延ばしせず、患者さんのご希望に添うよう努力しています。

最近の話題

高齢者の脊椎手術 詳しく見る

高齢者特有の病気の増加とともに、手術を受けてでも良くなりたいという意欲の増加により、最近非常に増加しています。当科では70台をピークに、80代の方の手術もかなり多く、当科での脊椎インストゥルメンテーション手術の最高年齢は102歳で、次が97歳です。高齢者は全身的予備能の低下のため、加え得る手術侵襲には限界があります。これを超えた手術を行えば術後合併症の頻度が増えます。一方、高齢者ほど脊椎の病態は高度であるため(高度で多椎間の脊柱管狭窄症、側弯・後弯・すべりなどの変形、骨粗鬆症性の圧迫骨折や破裂骨折、不安定症など)、大きな手術を要する傾向があります。高齢を理由に不十分な手術を行えば成績は低下します。当科では、高齢者の手術を安全かつ有効に行うため、以前に行った高齢者脊椎インストゥルメンテーション手術774件で検討し、年齢別の手術侵襲(手術時間と術中出血量)の安全域を示すスライディングスケールを作成し、これをめやすとして手術を行っています。70-74歳の患者さんには手術時間5時間、出血量2000cc以内、75-79歳の患者さんには4時間、1500cc以内、80-84歳の患者さんには3時間、1000cc以内、85-89歳の患者さんには2時間、500cc以内、90歳以上の患者さんには1時間、少量(200cc)が目安になります。もちろんこれを超えてもすぐ合併症を起こすわけではありませんが、大幅に超えることがないように手術計画を立てています。

骨粗鬆症性圧迫骨折 詳しく見る

高齢者に多い病気の1つに骨粗鬆症性の脊椎圧迫・破裂骨折があります。骨粗鬆症で弱くなった背骨や腰骨が急にまたは徐々につぶれる病気(圧迫骨折)で、骨が弱いため転倒などのはっきりした外傷がなくても起こります。しばしば激痛を伴い、変形が進行して後弯(前屈位、腰曲がり)の状態になり、まっすぐ立てなくなります。多数の骨に起こることも少なくなく、高度の後弯になります。急性のものでは激痛のため、起座不能となり、骨片が後方にはじけて(破裂骨折)脊髄や神経を圧迫すれば、激しい腰背痛に加え、両下肢の強い麻痺、尿や便の漏れを起こし、寝たきりとなってしまいます。慢性のものでは以下のような後弯症の症状が前面に出ます。腰曲がりの状態になり、腰背部の言いようのない重い痛み、耐え難い疲労感、胃の圧迫による食欲不振、嘔吐、肺の圧迫による息切れ、呼吸困難が生じます。脊柱管狭窄症を伴えば、強い坐骨神経痛や間欠跛行のため歩けなくなります。そうなる前に早めの診断と治療が必要で、麻痺が進行してきた場合には脊椎インストゥルメンテーション手術を行います。骨粗鬆症の強い場合はスクリューの効きが悪く、ゆるみを生じやすいため、スクリュー孔に人工骨を入れたり、フックを併用したり、ワイヤーやバンドを巻いたりして補強します。しばしば脊椎の前側と後側から手術を行わなければならず、体力に限界のある高齢者では、無理のないように手術を計画的に2回に分けて行っています。患者さん一人一人の体力と骨の強さに応じて十分な手術計画をたてて行う必要があります。

変形を伴う脊柱管狭窄症 詳しく見る

脊柱管狭窄症は高齢者に最も多い脊椎の病気で、歩行で下肢が痛くなり歩けなくなる間欠跛行、神経圧迫による臀部・下肢痛、麻痺、尿や便の失禁などを起こす病気で、神経圧迫が強いものでは手術が必要となります。変形や不安定性の少ないものでは神経の圧迫をとる除圧術のみで良いのですが、側弯やすべりが高度なものや、不安定性を伴ったものでは、除圧術のみだと変形が進行して腰背痛が増加したり、狭窄が再発する可能性があるため、除圧術に脊椎インストゥルメンテーションを用いた変形矯正固定術を併用する必要が生じます。

後弯症 詳しく見る

最も高度の後弯変形は、青壮年に起こる強直性脊椎炎でみられます。背骨の靱帯が骨のように硬くなり骨と骨を極端に丸まった状態でくっつけてしまい、背中を伸ばすことができず、極端な前傾姿勢となり正面を見ることができず、起立歩行が困難となります。

高齢者に多い後弯変形としては、上記の骨粗鬆症性圧迫骨折があります。

中~高度の後弯変形には矯正手術が必要で、矯正には金属のネジなどを用いる脊椎インストゥルメンテーション手術が不可欠で、脊椎前方から行う矯正椎体再建術、脊椎後方から行う矯正椎体間固定術、後方から椎体を楔状に切り取って矯正するPSOという手術手技などがあります。いずれも高度のテクニックが必要ですが、当科はこれらに精通しており、これらを併用して良好な矯正を獲得しています。直立が可能とな

診療実績

2022年度手術実績 詳しく見る
脊椎疾患
(入院+手術、疾患名重複あり) 404例
胸腰椎後方固定術 266(そのうち側弯症、後弯症など脊柱変形手術は111)
胸腰椎前方固定術 40
後方除圧術 15
頚椎椎弓形成術 14
頚椎後方固定術 8
頚椎前方固定術 12
経皮的椎体形成術(BKP) 33
脊椎脊髄腫瘍 1
その他 15
関節疾患(手術) 108例
人工股関節全置換術(THA) 34
人工股関節再置換術 1
人工膝関節全置換術(TKA) 49
人工膝関節単顆置換術(UKA) 15
母指CM関節症関節形成術(LRTI) 1
外反母趾手術 4
手外科疾患(手術) 60例
腱鞘切開術(ばね指、ド・ケルバン腱鞘炎) 21
手根管症候群 6
肘部管症候群 4
母指CM関節症 1
手指腱縫合術 4
手指軟部腫瘍切除 4
橈骨遠位端骨折 11
その他 9
スポーツ外科疾患(手術)35例
前十字靱帯再建術(ACL) 9
膝関節関節鏡 18
アキレス腱手術 8
外傷(手術)96例
鎖骨・肩・上腕 10
股関節・大腿 65
膝・下腿・足関節・足 21
その他(手術)12例
2017年度手術実績 詳しく見る
脊椎疾患
(入院+手術、疾患名重複あり) 385例
腰部脊柱管狭窄症 134
側弯症・後弯症 101
胸腰椎骨折 55
腰椎椎間板ヘルニア 17
頚椎症性脊髄症、神経根症 26
頚椎椎間板ヘルニア 6
頚椎後縦靱帯骨化症 5
頚椎骨折 3
感染性脊椎炎 5
脊椎・脊髄腫瘍 2
胸髄症 2
その他 2
関節疾患 (手術) 39例
人工股関節 21
人工膝関節 17
脛骨骨切り 1
外傷(手術)64例
鎖骨・肩・上腕 11
肘・前腕・手指 15
股関節・大腿 23
膝・下腿・足関節・足 10
アキレス腱 5
その他 (手術)51例
手根管・肘部管症候群 11
骨折抜釘 12
その他 28

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