教育研究グループ支援(研究成果報告)
研究の概要
読み物資料を活用した道徳の時間の授業づくりと指導案づくり
府中市立府中第八中学校
校長 森岡 耕平
今年度も年6回の勉強会を開催し、標記の研究主題を掲げ、毎回資料分析を中心に活動した。今年度は、取り組みの中で道徳の時間の指導経験の浅い教員にとってどのように資料を理解し、どのように「指導案づくり」につなげたらよいかに重点を置き、以下のように取り組んだ。
1.なぜ読み物資料なのか…
- 体験から学ぶことは大きい。
でも人の一生の中で感動的な体験がどれだけあるだろうか…。一つ二つはあっても… - そんなに多くはない。
だからこそ、感動的な体験に基づいた資料にひたり、主人公等になりきって物語の場面に出会うこと、そこで主人公の言動を支えた考えを深く探ること、その追体験が年間35回できれば、人生の重大な体験そのものに近づく学びに近づくことができる。 -
資料は評論家のように外からあ~だこ~だと読むのではだめ。
資料中の主人公等になりきって(その着ぐるみを着て)その状況を思い描ける右脳の働きが大切である。
「主人公は、その時、どうすればよかったか」は「×」
「主人公は、その時、どんなことを考えていたのか」が「○」
それがなりきって読む。なりきって考えることである。
2.道徳の「読み」とはなにか…
読み物資料の文章の構成やつくりを読むのではない。
「道徳上の問題」を取り上げた読み方をすること。
起 | 道徳上の問題がどこで起きたか |
---|---|
承 | 起こしてしまった問題に悩み、葛藤する様子 |
転 |
助言者(人とは限らない)が現れ、道徳的に変化するきっかけを得る ☆「どう考えて、主人公が変わっていくのか」、ここを考えさせることが道徳の読み |
結 | 道徳的によりよい心の変化が見られる ※起承転結の明確な資料は少ない。「承」がない資料が最近は多くなっている。 |
3.どう読むのか…
- 読みながら授業の組み立てを考えないこと
- さっーと読んで、
「誰が変化したのか」 「きっかけは何か」 「何で変化したのか」へ - 「誰が変わったのか」を考える
道徳的に変化した人が主人公である。その着ぐるみを着て読む。
その人になりきって資料を読む。 - 変わることになったきっかけは何かを考える。
☆その中に、その資料の「主題」と内容項目が入っている。 - 道徳的に変化したところはどこかを考える。これが、中心発問になる。
4.指導案を考える
- 「主題名 内容項目 ねらい」をおさえる。主題名が決まれば、内容項目は決まる。
- 助言者が言っていることが主題名である。
- 「ねらい」の書き方がいい加減である指導案が多い。
<ねらいの書き方>
「Aを通してBしようとするCを育てる」
A | 道徳的に変化するきっかけとなったことが入る。 |
---|---|
B | 内容項目から取り上げる。 |
C | 「心情」「判断力」「意欲・態度」のどれであるかを決める。 |
例 「ひきがえるとロバ」
A | 「ひきがえるを助けようと必死に荷車を引くロバの姿」 |
---|---|
B | 「生命尊重」 |
C |
「意欲・態度」 「ひきがえるを助けようと必死に荷車を引くロバの姿を通して、生命尊重しようとする意欲・態度を育てる。」 |
<基本的な指導案のフレーム>
- 主題名
- 内容項目
- ねらい
-
展開
学習活動 発問と予想される生徒の反応 指導上の留意点 導入 簡潔に
時間をかけない展開 読み物資料の判読
☆発問1 「事の起こり」を聞く…起
心情や考えに触れる
☆発問2 「悩み、葛藤」を聞く…承
心情や考えに触れる
☆発問3 「きっかけ」を聞く…助言
変化をもたらしたものを確認する
★中心発問 「変化」を聞く…転
考えを深める、広げる、つなげる
教師が必ず判読すること。
中心発問に導くために時間をかけず心情や考えを押さえる
多様な答えが期待できること
書かれていないことを考える終末 ☆発問4 「変化の後」を押さえる…結
よりよい生き方のすがすがしさを押さえるお説教にしない
野暮にしない - 評価
ねらいに対し、期待する「心情」・「判断」・「意欲・態度」の様子を押さえる
道徳の授業に関連して
- 起承転結が明確でない資料(「登場人物がみないい人」「場が変化する」など)も同じように考えて資料の読み、指導案づくりを行う。授業の骨組をつくる。
- 「心情」、「判断力」、「意欲・態度」のどれを育てるか…
感動的な資料の場合、生徒たちはすでに心を動かしている。むしろ、意欲・態度を取り上げた方がよい。 -
道徳の「態度」の指導とは
行動のパターンを教え込むこと、個別の行為を教えることは生徒指導。集団の関わり方や在り方について話し合い、その結果お互いの望ましい態度や行動の原則を決めることは特別活動。道徳は、自分の意志によって判断し、情によって思いを寄せ、よりよく生きようとする意欲・態度を育てること。 -
展開後段の取り扱いについて
小学校では、展開の後段や終末にかけて、生活にもどす指導が見受けられる。発達段階に応じて、そのふりかえりを考える必要はある。低学年では他律の段階(先生や親が言うことが正しい)にあり、生活に戻して考えさせることは大切であるが、行動の枠にはめ込むことは道徳ではない。従って、展開の後段について、または終末の教師の説話では、
- <低学年> 「その日の主題」にもどり考える
- <中学年> 「ある日のAくんのこと」を考える
- <高学年> 「余韻」だけにとどめる
- <中学生> 生活にもどらない。もどれば、「そのことを先生は言いたかったのか」と生徒はある出来事のお説教として道徳を捉えてしまう。
-
発問に対する生徒の発言や態度について
☆「知っている」ことと、「本当にわかる」ことの違いを見極める。頭で知っているだけではなく、こころを動かしでからだで感じとることが「わかる」ということを押さえる。