公益社団法人 東京都教職員互助会

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教育研究グループ支援(研究成果報告)

研究の概要

支援機器の授業での応用・支援機器を使ったコミュニケーション

高塚健二(アドバイザー水野吉丈教諭 越智通清教諭)

昨年度「支援機器の授業での応用・支援機器を使ったコミュニケーション」のテーマで支援機器を使ったATやAACの研究を行なった。

ATとはアシスティブテクノロジー(技術的支援方策)。AACとは拡大代替コミュニケーションの意味である。AACには様々な種類があり、ローテクとしてはマカトンサインや手話、絵カード、ハイテクとしてはVOCA.タブレット端末などの支援機器があげられる。また肢体不自由特別支援学校で用いられる各種スイッチや特殊なパソコン用マウスもAACの一種である。

本研究会ではAACの中でも支援機器や各種スイッチ、またパソコンのプレゼンテーションソフトを使った教材の製作や活用方法の勉強会を中心にコミュニケーション支援の方法を多くの教員に広め、深めていくことを主眼に置いて研究を進めることにした。(講座はすべて東京都立江戸川特別支援学校で開催した。)

AT・AAC(支援機器)勉強会(第1回) 平成23年4月28日(木)実施

参加者 本校教員26名

AT・AAC(支援機器)勉強会(第1回)最初の講座ということで、導入的な内容で行なった。

  1. 「タブレット端末であそぼう」
  2. 「校内にある支援機器やおもちゃを使ってみよう」
という二つのテーマで実施した。AT・AAC(支援機器)勉強会(第1回)

1.に関しては、この年に本校が『魔法のふでばこプロジェクト』というタブレット端末を学習活動に取り入れる研究実践校に選出され端末が貸与されることになった。しかしタブレット端末に触ったことのない教員が多かったため、まず、教員自身が端末の基礎的な使用方法について理解できる内容にし、端末を遊び感覚で触ってみて、IT機器に慣れていない教員にも簡単に操作できることと実感してもらえるようにした。2.に関しては江戸川特別支援学校の言語訓練室に各種スイッチ、VOCA等の支援機器が数多く揃えられており、それらを多くの教員に有効活用してもらうため、支援機器の紹介や基礎的な使用方法についての講義を行った。特別支援学校で使用されるスイッチとは、肢体の麻痺により手の操作に制限があるために使用されることが多い。電動オモチャ、家電製品などを外部スイッチで操作したり、パソコンのキーボード操作が難しい場合、外部スイッチを接続して入力したりすることがよく行われる。スイッチには様々な種類があり、児童生徒の障害の実態に合った各種スイッチが使用されている。またVOCAは障害により発語が難しい場合、意思表出のための代替手段として用いられる音声出力装置である。AT・AAC(支援機器)勉強会(第1回)

AAC製作講座(2回目) 平成23年6月3日(金)実施

参加者 本校教員16名

AAC製作講座(2回目)2回目の講座は肢体不自由校でよく使用されている各種スイッチの製作と電動オモチャの改造を行った。製作には半田ごてを使用するので、まず半田ごての基礎的な使用方法の講習を行い、それから製作に入った。初めて半田ごてを使用する教員が多かったが、それぞれの教員が思考錯誤しながら完成させていた。ここで作られたスイッチやオモチャは 1.棒型のフレキシブルスイッチ」 2.BDアダプタ 3.ケース型スイッチ 4.改造マウス 5.動くサルの電動オモチャにスイッチジャックを取り付ける 6.お酌をするロボット型電動オモチャにスイッチジャックを取り付けるといったものである。ちなみに4.の改造マウスとはパソコン用のマウスにスイッチジャックを取り付け、外部スイッチでパソコンを操作できるようにするものである。AAC製作講座(2回目)

AAC製作講座(第3回) 平成23年7月8日(金)実施

参加者 本校教員14名

AAC製作講座(第3回)3回目の講座も前回に引き続きスイッチの製作と電動オモチャの改造をメインに行った。主なものは 1.プッシュライト型スイッチ 2.ピルケース型(小型)スイッチ 3.電動シャボンガンにスイッチジャックを取り付ける等であった。

前回参加していた教員が多く、半田ごての操作に慣れてきた教員が主であったため、作業が比較的スムーズであった。AAC製作講座(2回目)

公開講座「肢体不自由特別支援学校における支援機器を使ったコミュニケーション支援・教科指導」(第4回目) 平成23年8月22日実施

参加者 本校以外の特別支援学校教員18名 福祉工場職員8名 就学前の療育機関職員2名 重症心身障害児施設職員1名 保育園保育士1名 本校教員7名 保護者1名 計38名

公開講座「肢体不自由特別支援学校における支援機器を使ったコミュニケーション支援・教科指導」(第4回目)夏期休業中に本校の公開講座として外部の教員、施設職員を主な対象として開催した。 内容は

  1. タブレット端末を使用した学習指導の実践事例
  2. スイッチ、VOCA等を使用した学習指導とコミュニケーション指導の実践事例
公開講座「肢体不自由特別支援学校における支援機器を使ったコミュニケーション支援・教科指導」(第4回目)

この講座には遠くは多摩地域の知的特別支援学校や本校に隣接する小岩特別支援学校、本校以外の肢体不自由特別支援学校の教員等が参加した。また本校の卒業後の進路先である福祉施設の職員、就学前の療育機関の職員等の参加もあった。1.に関してはこの時点で、タブレット端末を導入している学校は東京都ではほとんどなかったため、端末を直接、触ってもらいながら、基礎的な使い方が分かるような内容にした。参加者は、触っただけでダイレクトに変化や反応があるため、重度重複の生徒でも因果関係が分かりやすい教材であるとの認識をしてくれたようである。また発達障害児に対しても、文字の書き方を簡単に覚えられるアプリや辞書機能アプリ等、学習に有効な活用事例として紹介され、驚きの声があった。午後のスイッチ製作講座に関しては、当初、スイッチ教材は肢体不自由校で使われることが多いため、知的特別支援校からの参加はあまり想定していなかった。しかし実際は知的特別支援校でもスイッチで電動オモチャや簡単なパソコン操作をすることは、コミュニケーション指導において、かなり有効であるとのことであった。また就学前の療育機関では早速作ったスイッチ教材を療育に取り入れ、効果があったとの報告があり、お礼の言葉をいただくことができた。肢体不自由校における特別支援教育のセンター的な役割として、こういった支援機器の実践を公開することは重要なことであると実感した。この講座に参加した小岩特別支援学校の教員からは次回の製作講座にも参加したいとの要望があったため、5回目以降の講座は本校と小岩特支との合同開催という形に広がりを見せる展開となっていった。

AAC製作講座(第5回目) 平成23年10月21日実施

参加者 本校教員8名 小岩特支教員6名 計14名

AAC製作講座(第5回目)主な製作物は 1.プッシュボタンスイッチ 2.光るファンにスイッチジャックをとりつける 3.バブルハリケーン(電動オモチャ)にBDアダプタをつける 4.宝石箱VOCAの製作等であった。

学芸祭前月の製作講座ということもあり、この講座で製作したスイッチや電動オモチャを教材として使用する教員もいた。AAC製作講座(2回目)

AAC製作講座(パワーポイント教材製作講座)(第6回目) 平成23年11月30日実施

参加者 本校教員6名 小岩特支教員4名 計10名

AAC製作講座(パワーポイント教材製作講座)(第6回目)この回ではパワーポイントを使ったワンクリックで遊べる教材を作成した。

製作したものは 1.もぐらたたきゲーム 2.走る自動車 3.シルエットクイズの3点である。

プレゼンテーションソフトであるパワーポイントのアニメーション機能を組み合わせると、かなり面白い動きの教材になる。1.2.教材の対象としては重度重複障害の子どもでもマウスのワンクリックで操作できる教材のため、因果関係が分かりやすく、パソコンへの導入教材として有効である。3.の教材に関しては授業の前の導入として子どもに集中力をつけさせるフラッシュカード的な使い方ができる教材である。

やはりパワーポイント教材を作るのは初めての教員が多かったため、かなり詳細なマニュアルを作って、ひとつひとつ手順を確認しながら講座を進めることにより、全員が三つの教材を完成させることができた。

AAC製作講座(パワーポイント教材製作講座)(第6回目)AAC製作講座(パワーポイント教材製作講座)(第6回目)

AAC製作講座(第7回) 平成23年12月21日実施

参加者 本校教員4名 小岩特支4名 計8名

AAC製作講座(第7回)AAC製作講座(第7回)スイッチの製作をメインに講座を行った。終業式の前日ということもあり、参加者は少なめであったが、落ち着いた雰囲気の中、開催することができた。AAC製作講座(第7回)

PTA支援機器学習会(第8回目) 平成24年1月13日 実施

参加者 本校保護者27名 本校教員4名

PTA支援機器学習会(第8回目)最後に本校の保護者対象に支援機器の学習会を行った。

前半はタブレット端末を使った『魔法のふでばこプロジェクト』に関しての概要と実践事例に関しての講義を行い、後半はスイッチの製作講座を行った。

PTA支援機器学習会(第8回目)この講座は、タブレット端末やスイッチ等の支援機器の活用に関して、保護者にも理解してもらえるように開催した。タブレット端末に触れるのは初めての保護者がいたが、様々な学習アプリがあることや、ダイレクトに変化や反応がある支援機器のため、興味を持つ方が多かった。スイッチの製作講座に関しては、やはり、初めて半田ごてに触れる方や、そもそもスイッチ等の支援機器は見たことのない方もおられ、製作に苦労する場面が多々見られた。終了予定時刻をかなりオーバーしながらも、なんとか無事終了することができた。講座に参加した保護者からは「とても楽しかった」との感想が多数寄せられた。支援機器を必要とする子どもにとっては、学校の中だけでなく、家庭や卒後の進路先でも使われていくことが望ましいため、保護者への理解啓発は重要だと考える。

PTA支援機器学習会(第8回目)

PTA支援機器学習会(第8回目)昨年度の研究の反省点であるが、教材作りが中心となってしまい、教材づくりの楽しさを実感してもらうことはできたが、その教材を使った教育実践を深める機会が少なかったのが残念であった。これは24年度の課題として、さらに研究をすすめていきたい。24年度、本校は『魔法のふでばこプロジェクト』をさらに発展させた『魔法のじゅうたんプロジェクト』の研究校に選考され、タブレット端末を使った教育実践をさら展開していくことになった。またmy tobii P10という視線だけでPC入力ができる支援機器も導入されている。24年度はこういった新たな支援機器を使った実践も含めて、タブレット端末や支援機器を使った教育実践をさらに、校内・校外へ情報提供していきたい。

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