公益社団法人 東京都教職員互助会

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トップページ > 教育振興事業 > 平成22年度 助成グループ 研究テーマ > 言葉の力学習会 > 言葉の力学習会(研究成果報告)

教育研究グループ支援(研究成果報告)

研究の概要

言葉の力の育成
-国語科を通して-

1 主題設定の理由

本グループでは、これまで、言葉の力を高めるために、説明文を教材として取り上げ児童が表現することの良さや楽しさを知り、その結果、表現への意欲を高めることができるような学習活動、授業の工夫を研究した。

その結果、児童は学年に応じた「一人読み」の力がついた。このことによって、児童が自分の考えに自信をもてるようになり、意見の交流が活発になり、お互いがさらに高め合い、そこから新たな考えが生まれるという効果も生まれた。また、指導者側としては、副教材を開発したことによって、育てたい力や、さらに高めたいと考える力を効果的に指導できるようになった。このように、昨年度までの研究によって、情報を取り入れたり、発信したりするための土台ができてきたといえる。

本研究では、「言葉の力」を大きく分類して「情報収集力」、「思考力」、「表現力」、「意欲」の4つの力ととらえている。これまでの研究では、「情報収集力」、「表現力」、「意欲」について、取り上げることが多かった。

そこで、今回は、どのようにして、論理的な思考力をさらにのばしていくかについて焦点を当てていくことにした。また、国語科で学習したことを国語科だけにとどまらず、他教科に活用できるような力を育てていきたいと考えた。

2 研究仮説

国語科以外の教科で学習を進めるときに、自分の考えを組み立てたり、表現したりするときに必要であると感じる技能は数多くある。ところが、その教科の本来の学習のねらいではないため、その技能について、授業の中心として取り上げていない、あるいは、指導に十分に時間をかけていない実態があると考えた。そこで、次のような仮説を設定した。

<研究仮説>
まず、国語科で育てたい、考える時に必要な技能を他教科の学習活動から洗い出す。
次に、洗い出した技能を国語科で習得させる授業を工夫する。

このような過程を経て組み立てられた授業を行うことによって、児童は、筋道を立てて考えることを身につけ、自信をもって表現できるようになるであろう。

3 研究構想図

 

4 研究経過

 研 究 会 の 活 動 内 容

4月

主題・副主題設定、研究組織作り

6月

講演会 「言語活動の充実(1)」
講師 玉川大学教職大学院 准教授 井出 一雄 先生

7月

研究授業 4年 特設単元「生活を見つめて ~昔と今を比べる~」
授業者 鈴木 千津   講師 玉川大学教職大学院 准教授 井出 一雄 先生

9月

 

研究授業 
2年 特設単元「だいじなことは何かを考えて、話そう  ~たんていゲーム~」
授業者 上原 弘行   講師 玉川大学教職大学院 准教授 井出 一雄 先生

10月

 

講演会 「言語活動の充実(2)」
講師 玉川大学教職大学院 准教授 井出 一雄 先生

研究授業 5年 特設単元「展覧会のちらしをつくろう」
授業者 高垣大介  講師  玉川大学教職大学院 准教授 井出 一雄 先生

11月

研究授業 6年  算数 「拡大図と縮図」
授業者 中里 孝昭   講師   西東京市立中原小学校長 神山 繁樹 先生

12月

講演会 「学習評価について」
講師 財団法人教育調査研究所研究部長 小島 宏 先生

2月

講演会「言語活動の充実(2)」
講師 玉川大学教職大学院 准教授 井出 一雄 先生

3月

今年度の成果と課題・次年度の方針について

Ⅱ 研究の内容

1 低学年部会 
(1) 研究授業提案  2年 特設単元「だいじなことは何かを考えて、話そう」
(2) 育てたい力

  1. 写真から共通点と相違点を見つけ出し、分類する力
  2. 必要な情報を考え、目的にそって質問する力
  3. 自分の考えを論理的に説明する力

(3)学習内容

◇学習活動:4枚の写真を見て、写真からの情報と、インタビューをもとに1枚を特定する。

  1. 4枚の写真の中から、共通点・相違点を見つけ出し、グループに分類する。
  2. 1枚を特定するために必要な情報をインタビューして得る。
  3. 自分の考え方を論理的に説明する。

 2 中学年部会 
(1) 研究授業提案  4年 特設単元「生活を見つめて ~昔と今を比べる~」
(2) 育てたい力

  1. 表や絵、写真様々な情報を読み取る力
  2. 読み取ったことを関連づけて、文章や図表に表す力
  3. 文章構成を活用して、簡単な説明文を書く力

(3)学習内容
◇学習活動 :昔と今の給食の写真や献立表から、今と昔の違いを見つける。

  1. 昔と今の給食の相違点を見つけ出す。
  2. 分かりやすく工夫して、棒グラフや表にまとめる。
  3. グラフや表、写真を効果的に使い、相違点を説明する文章を書く。

 3 高学年部会 
(1) 研究授業提案  5年 特設単元「展覧会のちらしをつくろう」
(2) 育てたい力

  1. 伝えたいことを整理する力
  2. 伝える相手を意識して構成する力
  3. 分かりやすく発信するための工夫する力

(3)学習内容
◇学習活動 :「展覧会実施要項」と展覧会実施を知らせる学校便り「さかはま」をも
とに、地域の人に向けての展覧会のちらしを作成する。

  1. 展覧会の趣旨を考える。
  2. 地域の人に必要な情報を選択する。
  3. 工夫して効果的なちらしに作成する。

4 専科部会 
(1) 研究授業提案  6年 算数「拡大図と縮図」
(2) 育てたい力

  1. 拡大図・縮図の意味を理解する。
  2. 作図して拡大・縮小を体感する。
  3. 言葉で表現することにより一般化する。

(3)学習内容
◇学習活動 :辺の長さや、角の大きさを使った拡大図のかき方を理解する。

  1. 既習内容をもとに、拡大の仕方を考える。
  2. 自分の考えを図や文章で説明する。
  3. 友達の考え方を聞いて、自分の考え方をよりよいものにする。

5 社会科教科書の調査
今年度は、教科を特定することなく様々な視点から国語科で取り組める教材を探すことになった。しかし、共通の視点がないため、研究の幅が広がりすぎて絞りきれないという弱点も浮かんできた。
そこで、資料から情報を読み取ったり、新聞作りなど文章で表現したりする場面が多い社会科に限定し、来年度使用する社会科の教科書から、国語科で力をつけることができる論理的な思考力を必要とする技能を洗い出した。

6 昨年度の研究からの継続
学習を支える常時活動として、次の活動について今年度も全校で取り組んできた。低学年での読み聞かせ、教室の壁面に設けた国語コーナー(「国語のレシピ」)、日記、音読、暗唱、発表会等は、学校全体に定着して今年度も継続して行っている。

Ⅲ 研究の成果と課題
今年度は、国語科で学ばせたい論理的な思考力を使う場面を他教科から洗い出し、他教科へ生きる活用力を育てていく取り組みを行った結果、次のような成果と課題が挙げられる。

1 成果

○ 「論理的な思考力」を育てるための具体的な教材の作成

研究授業を通して、「論理的な思考力」を育てるための具体的な教材を作成することができた。
低学年では、情報を整理して考えにまとめていく基本的な思考の流れを知る授業を提案できた。この活動は、国語科だけでなく、生活科での比較やインタビューなどの学習に活用できる。
中学年では、情報を比較・分類して、観点をもって作り上げた考えをより分かりやすく伝えることについて学習する授業を提案できた。社会科や理科などで比較・分類したり、分かったことを表現したりする活動などに活用できる。
高学年では、伝える対象となる人がどのような相手であるかということから考えて、必要な内容を選択して作り上げた情報を効果的に表現する授業を提案できた。これは、社会科、総合的な学習や学級活動などの特別活動などにも活用できる。

○ 国語科と他の教科の両方での効果的な学習
国語と他の教科での学習計画や内容、児童の実態を十分に把握した上で、学習内容を計画すれば、国語科と他の教科の両方に効果的な学習ができる事が分かった。
国語科で学習するときに、学習した内容が他の教科のどんな場面で使えるのかを知らせることによって、児童に明確な目標を示せる。このため、児童の学習への意欲をより高めることができる。また、国語科で学習したことを他の教科で、すぐに生かせるので、定着しやすい。

 ○ 社会科教科書と国語科の関連の洗い出し
来年度使用する社会科の教科書から、「言葉の力」を育てるために国語科と関連させて取り組める内容を洗い出すことができた。

2 課題

○ 研究の絞り込み
「いろいろな教科から洗い出す」という本年度のテーマから、教科を特定することなく研究に取り組んだ。広い視野で取り組んだことは良かったが、テーマが広がりすぎて焦点が絞りきれなかった。次年度は、テーマを絞り込むことが必要である。

○ 変容を示す具体的な指標
今年度は、児童の変容をしるための具体的な指標を見つけられなかった。学習の効果を検討する材料として、客観的かつ具体的な指標も必要である。

 

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