公益社団法人 東京都教職員互助会

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教育研究グループ支援(研究成果報告)

平成22年度 道徳教育勉強会 研究報告

代表者 東大和市立第一中学校
校長 森岡 耕平

本勉強会の活動は2ヶ月に1回、年5回の勉強会を軸として、道徳教育の根本的な理解とその授業実戦力を高めるための具体的な指導方法の研究を中心として取り組んできた。

特に読み物資料の活用を通して、子どもたちがじっくりと考え、互いの意見を出し合い、新たな発見や気付きに感動する授業をどうしたら創れるかを中心テ-マとした。その研究報告を以下のようにまとめた。

1 道徳とは…

「学校における道徳教育は、道徳の時間を要として学校の教育活動全体を通じて行うものであり、道徳の時間はもとより、各教科、総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの特質に応じて、生徒の発達の段階を考慮して適切な指導を行わなければならない。」
(中学校学習指導要領 第1章総則 第1の2)

→もって生まれたものでなく、放っておいて育つものでもない。
だからこそ、しっかり責任をもって育てなければならない。

→見えているところを正すのが生活指導。
見えないところにせまるのが道徳指導。
双方向の指導が人を育てること。

2 道徳教育の目標

「道徳教育は、教育基本法及び…(略)その基盤としての道徳性を養うこと」
(中学校学習指導要領 第1章総則)

「…道徳的な心情、判断力、実践意欲と態度などの道徳性…」
(中学校学習指導要領 第3章道徳 第1目標)

●「道徳的な心情」とは、
→善いことをしたり、善いことに出会ったときのうれしい感情、悪いことをしたときに「あっしまった。」と思う感情。

☆感情が動かない、動くようにするためには…
→感動的な体験・大自然、乳幼児(生命)とのふれあい、愛情

●「道徳的判断力」とは、
→行為を判断するときの基にある考え方のレベル。
<発達段階>(Norman J. Bullによる発達段階)

自然「おもしろいか、つまらないか」→自然な快・苦の感情。本能的
他律「見つからなければ、言われなければ」→外からの規制・強制。
社会律「仲間(社会)の賞賛と非難が基準」→集団の中での役割の自覚へ
自律「良心による自己の賞賛と非難に従って判断」→理性の働き

☆判断力を捉え、高めるためには
→生徒の「だって…」の発言に注目。判断基準への刺激。社会体験
「やりたくてもやれないこと。やりたくなくてもやらなきゃならないこと」

●「道徳的実践意欲と態度」とは、
→「自分でよいと判断したことを実行しようとする意思の働き。

☆意欲や態度を育てるには
→自他の容認が必要。嫌みやねたみのない学級・学年・学校経営を基盤として。

3 道徳教育の内容

道徳の内容は、「4つの視点」から構成され、小学校の低学年・中学年・高学年そして中学校という4つの発達段階に応じて示されている。

この「内容項目」は、児童・生徒がよりよく生きようとする指針や手がかりとなるものである。従って、いずれの学年においても、意図的・計画的にバランス良く指導する必要がある。そのことを受けて、各学校や学年の特色、発達段階を考慮した指導の重点を図る必要がある。

  1. 主として自分自身に関すること(低4/中5/高6/中学5)
  2. 主として他の人とのかかわりに関すること (低4/中4/高5/中学6)
  3. 主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること (低3/中3/高3/中学3)
  4. 主として集団や社会とのかかわりに関すること (低5/中6/高8/中学10)

4 道徳の時間の評価

「生徒の道徳性については、常にその実態を把握して指導に生かすよう務める必要がある。ただし、道徳の時間の指導に関しては数値などによる評価は行わない。」
(中学校学習指導要領 第3章第3 指導計画の作成と内容の取り扱い)

●評価の観点 

  1. 道徳的な心情の評価
    (望ましい感じ方、考え方や行為に対してどのような感情をもっているか)
  2. 道徳的判断力の評価(道徳的な価値をどのよう捉え、思考し、判断したか)
  3. 道徳的実践意欲(よりよく生きようとする意志や行動の構えがどれだけ芽生えているか、また定着しているか)

評価方法

  1. 心のノ-ト、ワ-クシ-トの活用。
  2. 自己評価の活用。

5 道徳の時間の授業づくり-道徳教育の「要」として-

1.道徳の授業の準備【感動のある授業作り】
  1. 資料を読む。範読は教師自身。
    ア「スト-リ-を読む」
    イ「登場人物の気持ちを読む」
    ウ「道徳上の問題のありかを読む」
    エ「人間を読む」
  2. 場面分けをする。-道徳上の問題と構図-
    →(1)のイとウから道徳的変化をとらえる。
  3. 中心場面を決める。
    この授業の「山」となるところ
  4. 中心発問を考える。
    →「どんな気持ちだったのかな」(心情)「どう考えたのかな」(判断力)
    「どうしようと思ったのかな」(実践意欲)を問いかけ、考えさせる・
    ★「どうすべきだったのかな」は行動や行為を正そうとする、またはお説教につながる発問。これが授業をつまらなくする。教師が生徒の口をかりて言わせるだけの授業、誘導尋問のような授業に陥る。
  5. 子どもの発言を予想する。→正解はない/自由な発言/「+」も「-」も
  6. ねらい・内容項目・主題を確認する。
  7. 中心場面以外の発問とそれに対する子どもの発言の予想
  8. 指導案を作成する。
2.中心発問の創り方

☆道徳の資料のパタ-ン
「主人公が道徳的に変化する」「主人公が道徳的にずっといい人」
「登場人物がみんないい人 感動的な構成」その他

  1. 副詞に注目する。
  2. 時間(物理的・空間的)の推移に注目する。-行間を読む-
  3. 「あなただったら」という問いは最後にしないと人物から離れる。
3.授業評価について
  1. ワ-クシ-トを用意する。書かせることだけに陥らない。
  2. 感想、わかったことをまとめる。
  3. 自己評価する。

4.導入・展開・終末に押さえること
  1. 本時のねらいを「価値への導入」「資料への導入」として出きるだけ短時間で。
  2. 展開で、書かせることやまとめることに多くの時間をとらない。自由な発言の時間を保障する。班で話し合ってまとめるのは道徳ではない。
  3. 終末では生活経験を振り返る出来事を聞くだけではダメ。「そのときどう思った」と、こころを聞く。
  4. 教師の説話で終わるのではなく、「今日勉強してどう思った」で深める。

6 成果と課題

読み物資料の活用は最も基本的な道徳の時間の授業作りに必要な物である。その実際の授業の場面で大切なことは中心発問をどうつくるかである。今年度の5回の勉強会では、その都度、異なる読み物資料から参加者でのグル-プワ-ク、講師の先生からの指導助言で充実した勉強会を開催できた。今後も、小学校・中学校・高校の校種を問わず多くの方々の参加できる勉強会として広く告知できればと考えている。道徳の時間に悩むすべての先生方にとって、その答えを見いだせる勉強会として今後も継続活動していきたい。

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