公益社団法人 東京都教職員互助会

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外部人材活用事例の紹介-ボランティアの実践報告-

個別指導での活動

昭島市立光華小学校
ボランティア  小室 壽彦

個別指導での活動

【1】支援曜日/時間 : 水・木曜日/2~4校時
【2】個別支援対象児童

下記のような、保護者に向けた学校長からの「お知らせ」によって選ばれた児童。

学習支援・サポート教室募集のお知らせ

(略)
昨年度の学年・学級活動の中で、それぞれの子どもの学習・生活上の課題が見えてきました。それらの課題には個別指導が効果的な場合があります。
そこで今年度も個別に支援を行う教室(サポート教室)を開設いたします。
サポート教室では主に「国語」「算数」及び「友人関係など社会スキル」について、個々への指導を行います。(略)

(設定時間は子どもの状況・学級の時間割とのかねあいによって決定します。)
入級は保護者の希望のもとに、校長が必要と判断した場合となります。(以下略)
6名の学習時の傾向として、大きく3つのタイプに分けられた。
  1. 授業の進度に追い付いていけない。
    授業の速度が本人の知識理解や技能の能力を超えている。
  2. 集団行動をすることが苦手である。
    学級の友達と同じ活動をすることができにくい。
  3. 集中力や持続力に欠ける。
    学習の途中で気持ちにむらが出る。
共通して感じられること。
その他(直したいこと)
【3】学習等支援の基本方針
  1. 個人内評価をすること。
    • 少しでもできたら、その時その場でほめて励ます。
    • 結果もさることながら、経過の中で「できたこと」を共に喜ぶ。
  2. 子供のペースで考えさせること。
    • 答えをせかせたり、結果をすぐに求めない。
    • 筋道を立てて考える素地を育てる。
  3. 基礎基本をしっかり身に着けさせる。
    • 算数 乗法九九、計算技能(くりあがり・くりさがり)
    • 国語 文章をつかえずに読めること。
      正確にていねいに習った漢字が書けること。
  4. よき聞き手になること
    • 本人の興味や関心を持っていることに耳を傾ける。
  5. 45分を子どもの状況に応じて、柔軟に接していく。
    • 学習・学習で息もつけないような時間にしない。
    • 時にはゲームやクイズ、身近な会話などに時間をとる。
  6. 学習用具などにも気を配る。
【4】学習等の支援
45分の学習内容
  1. 学習で終始できる子どもの場合
    • (ア)学習進度に合わせた指導。
    • (イ)つまずいている原因の発見とその手立て。
      例)小数の計算の誤答→ 乗法九九の未習熟、位取りの理解不足→ 改善。
    • (ウ)担任の手の回りきれない学習の補充。
      例)ひらがな・漢字の筆順の修正・鉛筆の持ち方。
  2. 学習・学習以外の活動の子どもの場合
    • 45分、活動が持続できない子供の場合も、1.アイウは基本
      例)図鑑などを一緒に見る。ゲームをする、折り紙を折る、イラストその他。
  3. 学習・学習以外の活動の子どもの場合(学習の手立ては1.2に準ずる)
    【留意点】
    • 学習以外の活動をするときは、一緒に楽しみながら、それとなく国語や算数、他教科などと関わらせたり、考えさせたりして過ごす。
    • 終わりにするタイミングを判断する。
教科外の支援
【5】担任との連携
  1. 学習指導の連絡
    • 担任からの指示連絡がある場合(テスト・ドリル・プリントなど)
      (ドリルやテストでできなかった問題の見直しも含む。)
    • 担任からの指示がない場合、指導者の判断。
      授業で進めている教科書の範囲の学習を支援する。
      状況に応じて、国語や算数のつまずいている部分の改善を図る。
  2. 「学習支援の記録」により
    • 担任とは、話し合う時間がほとんど取れないので、何を支援したのかを伝えている。
    • どうしても伝えたい場合は、廊下等で立ち話となることが多い。
学習内容 児童の様子等
<国語> 物語の音読

たどたどしい読み方であったが、全文を読み通す。
昨夜はおそくまで起きていたので、少し眠いとか。

一時休憩し、その後は挿絵の部分を抜き書きした。

歩きながら「冬に近づくとなぜ木の葉が落ちるのか」「メタセコイヤの木の由来」などの話をするうち、気持ちが落ち着いてきたようだ。
「きょうは教室にいると気分が悪くなるので、外に出た」と言う。

<算数> 教科書107頁 3位数÷2位数の計算練習

見当をつけて商を立てる計算・・面倒がって「できない」と投げ出すことがしばしば。つまずきの原因・乗法九九がまだ十分に駆使できないので復習する。

【6】個々の児童の支援(対応)

Aくん 

学習中ほんの少しでもできないと「ああ面倒くさい」を連発し、「なんでやらなければならならないの」と落書きを始めたり、椅子から離れたりする。
そこで今の学力でできる問題を作り、[チャレンジだ]と鉛筆を持たせる。
しぶしぶやった解答に、「できるじゃないか」と赤で大きく丸をつける。
「ほめられることはよいことだ」と次の問題にも取り組み、丸をせがむ。
易から難へと問題は続くが、できたことに満足感を味わい、少しでも問題に挑戦していく学習意欲の向上を目指している。
サポート教室に喜んでくるところをみると、いくらか成果があがっているのではないかと思われる。

Bくん

集団の中でみんなと同じ活動をするのが、大変苦手で自分の好きな活動をすることが多い。
学習用具をまったく持たず、その時々自分が興味や関心に関わるものを持ってくることがよくある。そんな時には、その興味や関心を深めて、少しでも学習に役立てるように接している。
< 砂場で砂鉄を取りたい >     
理科室から何種類かの永久磁石を借りてきて、砂場で砂鉄を採取する。
磁石の種類やS極N極ではどうかなど実験観察をして結果をまとめさせた。
理解力があり探究心もあるので、こちらの対応の仕方で興味の中身が高まるように支援している。

Cくん

欠席が多いことから、学習に切れ目ができ学習進度に追い付いていけない。
一見学習意欲が低そうだが、「できるようになりたい」という気持ちが伝わってくる。
特に算数は大の苦手で、4月ごろは教科書を開こうともしなかった。
そこで無理に進度に合わせず、つまずき始めた部分を探し補強する。
乗法九九の完全乗方九九の安全習得、「1位数+1位数」や「1位数-1位数」のドリ学習を通して、進行中の学習内容にも入っていった。
近ごろは自分から教科書を開き、問題の解き方を聞くようにもなってきた。
「学校には、できるだけ来ようね」と励ましている。

Dくん

集中持続時間が日によって幅があり、時には固まったり机に顔を伏せたりしたことがあった。   
そんな時は、一時学習を中断してオセロやカードなどをすることにした。
少しの時間で充電ができ、残りの時間、学習に戻ることが多くなってきた。
時々、一時休憩が長くなることがあるが、ゲームを通して考える力をつけたり、本人を知るよい機会にもなるので、時に応じて接している。

Eくん  

勉強を始める前に、「聞いてよ」と話しかけることがよくあった。
勉強がしたくないからと思ったこともあったが、聞いてもらえる相手が欲しくて話し始めると分かったのは、何回か机を並べてからだった。
ゆっくり聞いていても、10分もしないうちに、大抵は担任から指示された学習を自分から始めることが多くなった。
しゃべった後は、割合落ち着いて学習している。
学習中も話し出すことがあるが、その時は、「勉強に集中して、おしゃべりをしない」と注意したりする。

Fくん

簡単にできる問題は取り組むが、少し工夫しないと解けない問題に当たると、立ち往生してしまうことが多い。
特に算数では、その傾向が少なくないので、いろいろな解き方があることを気づかせている。
本人のやり方で解答できても、「ほかのやり方でも答が出せないかな」とうながす。
最近いくらか「別のやり方でも答が出せるかな」という言葉が出始めてきた。

【7】まとめ

サポート教室に来る子供たちは、当たり前のように出入りしている。
かつての「特別の学習の場」の「特別の子ども」という意識は、ほとんど見受けられない。周囲の友達は、ごく自然にサポート教室に通う友達の活動を認めている。

こうした状況を作り出している要因は、いろいろ考えられるが、この学校に流れる温かい人的環境があってこそ、個々の活動が生かされているように思える。

週1回1時間の中での支援では、個性に応じた個別指導の成果はそう望めない。
しかし、子供たちの「自分のペースで活動できる時間と場」の中で培われるものは小さくても、その価値は決して小さくはないと考える。

「学ぶ意欲」「できた楽しさ」「新しいことへの挑戦」の発芽の刺激になればと願っている。

【8】終わりに

ひとりひとりと接してきて、「わかるように教えてほしい」「自分の良さを見つけてほしい」「自分の話を聞いてほしい」「一緒に遊んでほしい」 という心の願いが、どの子どもからも聞こえてくる。

指導する者にとって、それは指導技術であり、児童理解であり、受容と共感であり、共に楽しむゆとりであろうか。
「支援する」という活動の重みをあらためて感じている。

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