公益社団法人 東京都教職員互助会

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トップページ > 教育振興事業 > 平成22年度 助成グループ 研究テーマ > 特設「日本語」の指導 >特設「日本語」の指導(研究成果報告)

教育研究グループ支援(研究成果報告)

研究の概要

特設「日本語」の指導

ねらい

  1. 豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚を育成する。
  2. 日本人の母語である日本語を学ぶことにより、「知的生活の基盤」「コミュニケーション能力の基盤」「感性・情緒等の基盤」をつくる。
  3. 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を育てる。
  4. 古語や漢語を含む日本語を理解するとともに、自国の文化や伝統に触れ、自国の良さを体感し、継承しようとする資質や態度を育てる。
  5. 日本語を学ぶことにより、日本人としての豊かな教養の素地を培う。

主な内容

  1. 美しい日本語の語彙の習得につながるもの。
  2. 日本の古典や現代文学の名文・詩・俳句・和歌等の朗読・暗誦を重視する。
  3. 伝統的な遊びや歌(唱歌・わらべ唄など)などの体験・身体活動も含めた内容とする。
  4. 文化や年中行事・祝日などの理解・調べ学習等多様な活動を取り入れる。
  5. )自然や季節・風土などへの豊かな感性の基礎を磨くことができる教材を工夫する。

教育課程上の取り扱いについて

ア 低学年は年間10~11時間(余剰時間;学級活動)
イ 中学年は総合的な学習の時間の年間35時間活用。
ウ 高学年は総合的な学習の時間の年間35時間活用。

学習の基本パターンについて

【1】古文・漢詩・論語・短歌・俳句など

指導上の留意点

主な学習活動例

【2】年中行事・ことわざ・四文字熟語

指導上の留意点

主な学習活動例

【3】年中行事・ことわざ・四文字熟語

主な学習例

年間指導計画

平成22年度総合日本語 年間計画はこちらのPDFをご確認下さい。

主な実践例

(実践事例1) 第3学年 総合日本語指導案

(1)題材名 年中行事① 祝日① 百人一首 (複数題材)
(2)ねらい

  1. 代表的な年中行事を取り上げ、行事に込められた人々の願いを知る。
  2. 祝日について、その意義や背景を知るとともに、祝日をどのように迎えるかについて考える機会とする。
  3. 百人一首に慣れ親しむ。
主な学習活動 ☆留意点  ●準備する物

1.学習のねらいや予定を知る。

2.4・5月の代表的な年中行事の意味を調べ、発表し合う。
・ワークシートに分かったことをまとめる。

3.4~8月で知っている祝日を発表する。
・4~8月の祝日の意義を話し合う。

○取り上げられた百人一首の意味を知り、情景・心情などを想像しながら暗誦する。
・扱った和歌を視写したり声に出して暗誦したりする。
4.学習の振り返りをする。

☆「年中行事」とは、1年の間に、何らかの目的や意味をもって、慣例として行われる行事であることを知る。
☆ひなまつりの例等を取り上げて年中行事を説明する。
☆花見、花祭り、八十八夜、端午の節句、立夏などを取り上げる。
☆清明、穀雨は教師が簡単に説明する。
●ワークシートに分かったことを記入させる。
☆昭和の日、憲法記念日、みどりの日、こどもの日、海の日を取り上げ、祝日の意義や背景について調べさせる。
☆祝日の迎え方や過ごし方まで理解させたい。
●祝日を取り上げたワークシートを用意する。
☆3年生の割り当ての百人一首をいくつか取り上
げる。
☆短歌に表れた自然の情景や人の心情、時代背景等のおおよそを理解させる。
●振り返りカード

(3)授業後の反省

  1. 学習内容が盛りだくさんで、児童が十分に考える時間を確保できなかった。
  2. 行事や祝日で、何をどう取り上げるかを教師の側で精選しておくことが必要であった。
  3. どの子にも楽しく学習できるように、ワークシートを工夫したことが良かった。
  4. 「調べ学習」と「知識・理解」の学習を明確にした方が、児童の意欲を高める上で良いのではないか。
  5. 複数題材と、単題材を扱う時間を、教材内容を基に考慮することが大切である。

(実践事例2)第6学年 総合日本語指導案

(1)題材名 平家物語 (1題材を45分で扱う)
(2)ねらい
  

  1. 平家物語の一節を読み、大意をつかむとともに、そこに盛られた思想を考える。
  2. 暗誦を通して、音韻を楽しむ。

(3)主な学習活動

    学習活動

  ☆留意点   ●準備する物

1.本時の学習のめあてを知る。
・冒頭の一節について、意味を知り、朗読、暗誦する。
2.教師の範読を聞く
・一文ずつ、朗読する。(一斉)  
・一人読みをする。
3.グループ毎に意味調べをし、冒頭の一節の意味を話し合う。
・冒頭の一節の意味を知る。

4.朗読練習、暗誦練習をする。
・指名朗読する。
5.振り返りをする

●平家物語の一節のプリント
・読み仮名のないプリント

☆教師の後を追って読ませる。
●語句カード(祇園精舎、諸行無常の響き、・・・・)
☆声に出して、何度も読ませる。
●国語辞典、漢和辞典等
☆知っている語句や調べた語句から、意味を推測
させるようにする。
☆源平の頃の時代背景に触れながら、大意を説明
する。
・「平氏にあらずんば人にあらず」等
・平家物語は平家の栄華と没落を描いた一大
叙事詩であることを理解させる。
☆時間があれば視写させる。
●振り返りカード

(4)授業を振り返って

  1. 一語一語の言葉の意味にとらわれて、文脈を想像して読むことが少しおろそかになった。
  2. それぞれの文章を基に、全体の大意を考えさせることがやや難しかった。
  3. 「無常観」を考えさせることで、当時の人々の思いを想像させることができたが、自分に振り返って考えさせるためには、時代背景をしっかりつかませる必要がある。
  4. 歴史学習との関連では、進度が合わず、社会科との関連として扱うには難しかった。
  5. 実際に琵琶法師による「弾き語り」のようなものを導入すると、より臨場感のある学習になったのではないか。
  6. どの月に扱うのかは、他教科との関連も明確にしながら考えていくとよい。
  7. 「調べ学習」として扱っても、題材そのものが難しいので、ある程度教師による補足で良いのではないか。
(実践事例3) 第6学年日本語授業記録 

(1)題材名 古文「枕草子」
日本語の響きやリズムの美しさを味わおう 
(2)目標

(3)学習の展開

主な学習活動・発問

児童の反応

1.学習する古文を知り、見通しをもつ。
・今日は枕草子を学習します。
・この「草」は前にもでてきましたね。
・徒然草のように、心に思い浮かんできたことを書き留めたものですね。
2.範読を聞き、音読する。
・この文章を①、②、③に注意しながら読んでみよう
・「やうやう」の所を「ようよう」と書きましたね。
・自分で読んでみましょう。
3.清少納言や作品の書かれた時代背景について知る。
○この文を書いた人は、どんな人でしょう。
<スクリーンに絵を投影>
・どういう人か分かる?
・清少納言は、鋭い感覚の持ち主で言葉も豊富でした。その人が書いたのが枕草子です。
4.わからない言葉に線を引き、どのような意味か考える。
・分からない言葉を出し合いましょう。
5.正しい言葉の意味や作品の大意について知る。
・「あけぼの」は「あけ+ほのか」という意味です。つまり明け方のことです。
・「やまぎは」の「きわ」は「窓ぎわ」と一緒。山との境の空を指します。
・「紫だちたる」少し赤みがかった紫色になって
○この文の意味は「春は明け方―――」という意味だね。清少納言は何が言いたかったのでしょう。
・「春はあけぼの」って言うのは、「明け方が美しい」ってことだよね。だから、明け方がすばらしいとか、美しいという言葉を入れると分かるね。
6.文の大意を自分の言葉でまとめ、発表する。
・自分なりに浮かんだ風景を言葉に表しましょう。
7.自分の好きな春の風景を思い浮かべ、「枕草子」の形式に当てはめて書く。
・清少納言は、「あけぼの」でした。みんなのイメージは?

  8.暗記できるよう、全文を通して音読する。

・徒然  草

・女の人、平安時代の人、紫式部のライバル
・ぽっちゃり、髪の毛が長い。着物をたくさん着ています。
・すごい身分で、頭がいいと思います。

・「やうやう」「だちたる」「たなびきたる」「あかりて」「やまぎは」

・明け方
・少しずつ、ゆっくりと

・明るくなって
・たなびいて、広がって、横に伸びていく

・春は明け方が美しい瞬間
・春は、明け方こそがすばらしい。
・「タンポポ」「植物」「桜」「新しいスタート」
・斉読する

 

(4)授業を振り返って

  1. 全文を読んで、季節ごとの比較をすると、「春はあけぼの 夏は夜 秋は夕暮れ 冬はつとめて」となり、季 節ごとの「一日の中での美しい時間・瞬間」に子供たちも着目しやすい。また、当時の平安貴族たちの「自然に対する感性」にふれやすいのではないか。
  2. 春はあけぼの   夏は○○
    秋は夕暮れ    冬は○○ 
    というように、季節毎の違いを明確にすると、「あけぼの」がよりはっきりと焦点化でき、考えやすかったのではないか。
  3. 最後の「自分だったらーー」という学習で、清少納言との「春」のイメージとの違いを際だたせることができた。

実践を振り替えって

主な成果
  1. 当初のねらいである「国際社会に生きる日本人としての自覚を育成する」ために、自国の伝統や文化を理解させるという点では効果的な指導であったといえる。児童に意図的・系統的に「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を育てる」ためには、さらに指導法の改善に努め、児童が意欲的に学習できるようにしていきたい。
  2. 「古語や漢語を含む日本語を理解するとともに、自国の文化や伝統に触れ、自国のよさを体感し、継承しようとする資質や態度を育てる」ためには、「日本語」指導とともに、体験的な学習も取り入れ、そのよさを体験的に理解することが必要である。また、実際に文化や伝統を継承し、発展させようとしている多くの人とのふれ合いの中から、思いや考えに触れさせることも大切である。
  3. 暗誦や朗読などを通して、日本語の美しさにふれる機会を日常的に設けるとともに、「百人一首大会」や「朗読大会」を取り入れることで、児童の意欲を育てることができた。
課題
  1. 低学年は、余剰時間を設けて「日本語」指導を行うことができたが、3年生以上で「総合的な学習の時間」で指導していくには、より「横断的・総合的」な学習として組み立てていくことが求められる。「自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育成する」ために、小単元での学習計画をしっかりと立て、「探求的学習」へと改善していくことが必要である。
  2. 学級指導の中に、「日本語」を取り扱う場を設け、年中行事や祝日に対する指導を行っていくことが必要である。
  3. 総合的な学習の時間における「国際理解教育」の活動として、「自国理解」「伝統文化」の学習に位置付け、指導していくことが必要である。
  4. こうした位置づけの基に、従前行ってきた「日本語」指導の改善・充実を図っていく。
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