若手、新規採用職員へのメンタルケアに関して
今年も多くの学校において、若手や新規採用教員の方々を迎え入れ、研修・育成や業務習得を進めているところかと思います。
現在、官公庁や民間企業においても採用難、人員不足や途中での離職など、個人と組織を取り巻く状況として、いかに離職を防ぎ、定着を支援するかが課題となっています。
また、個人においては、新しい職場環境に慣れ、社会人としての自覚やルール、モラルを身に付け、業務を円滑に習得し、研鑽を進めていくことが求められています。
こうした組織と個人の円滑なマッチングや個人の成長がなされることにより、新しい教員の方々が自信を持って、教育活動に貢献できるようになり、またイキイキと働き、生活も充実していく好循環が生まれていきます。
ここで、現在起こりうる職場適応の問題を、事例を通じて確認してみましょう。
架空事例:Aさん20代女性教員
Aさんは、4月採用の新規採用教員です。現在、メンターや指導教員、学年主任から指導助言されることになっているが、人によって、指導や意見が異なることがたびたびあり、混乱するようになりました。
先輩に質問をすると「前に言ったよね」と返されることが多く、先輩たちには一度教えてもらったことは二度と聞いてはいけないような雰囲気が強く、徐々に息苦しさや食欲不振、不眠が出現してきました。
同期も同じ理由で精神的な不調があると聞くようになり、両親や同業の友人に職場環境について相談をすると、「あまり良い環境ではない」と言われ、退職を考えるようになってきました。
ただし、学生の頃から類似した不調のサインが出ることがあり、長期的に体調が優れなかったため、自分自身の課題もあると思い、一度専門家に相談した方が良いと思い、「こころの相談」に来談しました。
こころの相談にて
心理職は経過と現状を確認し、ある程度ご自身の体調不良の原因やパターンを自己分析できていること、地元に転職する方向性で考えていることを踏まえ、転職までの間、不安などの心理面を言葉にしていく取り組みを促しながら、相談を複数回継続しました。
退職や今後の進路に向けて心の整理が進み、自分にとってどのような環境で働き、生活するのが適切なのかが明確になり、次の一歩を踏み出す機会となりました。
このような場合、結果として進路変更にいたったわけですが、職場や組織では、離職防止や定着支援に向けた様々な取り組みがなされています。
研修や教育、業務支援として、メンターや指導員を付け、様々な困りごとや悩みに相談できる仕組みを作る、先輩とのペアリングをしながら当面の間、業務習得を支援する、評価や人事などにしばられずに定期的に上長などと面談・相談を行う(1on1ミーティング)、研修や教育をウェブ化・オンデマンドでいつでも受講できるようにする、同期や同職同士でつながる機会を提供する(交流会、勉強会など)、などが行われるところです。
仕事や職場、人間関係などの悩みや困りごとは、上に挙げたような様々な立場の方々に日常的に相談できるとよいでしょう。
また、メンタル面や心身の不調、話しづらい内容などは、職場外に設置された、こころのケアの専門家による「こころの相談」を上手に活用いただければと思います。