公益社団法人東京都教職員互助会 三楽病院

診療科

小児科Pediatrics

ドクターインタビュー

ご家族の背景も診察の大切なポイントです

小さな子どもは言葉で体調を伝えられませんが、元気がなければぐったりしますし、元気があれば笑顔を見せます。子どもの場合、体調が顕著に現れるので、動かない、食べられない、眠れない、表情が少ない、呼吸が苦しそうなど、私たち小児科医は子どもの様子を見て診察します。
最近の医療の流れとして、例えば咳が出て発熱が続いていたら肺炎が疑われるのですぐにCTを撮影するなど、検査を基本にする傾向があります。でも小児科医は必ずお子さんの体に聴診器を当てて、身体所見をしっかり診ます。私も赤ちゃんを診察する時は、おむつも外して頭のてっぺんから足の先まで全身を診ます。新しい医療機器がどんどん開発されていますが、小児科医は今でも聴診器を使って聴覚、視覚、触覚など五感をフルに活用して診察しているのです。
私は診察の際、お子さんの体調だけでなく、親御さんの様子など家族の背景も意識するように心掛けています。子どもは家族の中で生きているので、家族が機能不全になってしまったら、健やかな成長は望めません。その視点は欠かさずに持っていたいと思っています。

フェイス・トゥ・フェイスで不安解消に努めます

子どもはたくさん風邪をひくことで、自分の免疫を高めていきます。保育園や幼稚園で集団生活をする中で免疫を強くしているのです。ただ、お子さんによって個人差があるので、同じウイルス感染でも1~2日で元気になる子もいれば、発熱が1週間続く子もいます。熱が長引く子のお母さんが責任を感じてしまうことがありますが、個人差はあくまでも小児期の体質によるものなので、落ち込むことはありません。いろいろなケースがあることを親御さんはもちろん、周りの方たちにも理解していただきたいと思います。
実は私も子どもが熱を出した時、とても不安になりました。泣いている子どもを抱いて住んでいたマンションのエレベーターに乗っていると、別の階にお住いだった年配の女性から「どうしたの? 熱なの? お母さんも赤ちゃんも大丈夫?」と声を掛けられたことがありました。涙が出そうなくらい嬉しくて、今でもはっきりと記憶に残っています。私がその一言で救われたように、今度は私が親御さんたちの不安を少しでも減らし、安心感を持っていただけるように努めたいと思います。
現代はインターネットの情報が溢れています。でもその情報は安心を与えるのではなく、逆に不安を増幅されて来られる方が増えているような気がします。昔は大家族だったので、妹や弟が生まれたり、お姉さんが出産したりして赤ちゃんのお世話をする経験がありましたが、今は出産して初めて赤ちゃんに触れたという方が少なくありません。そのせいか普通の風邪でも親御さんは怖い病気にかかったのではないかと悲観的になりがちです。そのような不安はぜひ当院に来ていただいて、フェイス・トゥ・フェイスで話をすることで解消できたらと思います。ご家族の不安解消のために小児科医だけでなく、看護スタッフも含めて親御さんをサポートする役割は大きいと考えています。

成長する子どもたちの姿にやりがいを感じます

人と関わる仕事にすごくやりがいを感じ、子どもが好きだったこともあって小児科医になろうと思いましたが、一度も後悔したことはありません。毎日、たくさんのお子さんに会えて関われて、これほどありがたいことはありません。お子さんの成長過程に伴走させてもらえて、身体や心の成長を見守ることができるので、小児科医になって本当に良かったと思っています。5、6年前から、かつて私が診ていたお子さんが結婚・出産をして赤ちゃんをわざわざ見せに来てくれることが増えてきました。時間が経過しても患者さんと繋がっていられることに幸せを感じています。

子どもに寛容な社会になることを願っています

子どもがいてこそ健全な社会なので、子どもがたくさんいる社会になってほしいと思います。電車やバスの中で子どもに厳しい視線を向けられることがありますが、子どもの声がうるさいと言って親御さんを責めるのではなく、社会全体で一緒に子どもを育てましょうという視点が大切ではないでしょうか。子どもは社会の宝だという価値観をみんなが共有できたらいいですよね。子どもに対してもう少し寛容になってほしいですし、子育て中の頑張っているご家族にもっと優しい視線を向け、手助けする社会であってほしいと思います。私は子どもの声が聞こえると嬉しくなりますが、そうでない方もいらっしゃるのは本当に辛いことです。

心配ごとがあれば遠慮なくご相談ください

子育ては大変なことも多いけれど、楽しいこともたくさんあります。数年前までは赤ちゃんのお母さんが私と同世代で、一緒に育てているような感覚でしたが、最近はお母さんたちが私よりも年下になり、世代的に違ってきたことを感じています。それはそれで、小児科医としてまた新たな境地で親御さんたちに寄り添っていけたらいいと思います。
心配なことがありましたら、三楽病院の敷居は低いので気軽にご相談していただけたら嬉しいです。小児科で診察するのは一般的に15歳までとされ、高校生からは内科で診察することが多いのですが、小児科学会としては思春期で心も身体もとても揺れる時期は、小児科で診察した方がいいのではないかと判断しています。当院でも初診の受付では高校生を内科にご案内していますが、ご希望があれば高校生でも診察しますのでご相談ください。小児科に直接来ていただいて、医師や看護師と話すことで心配ごとやお悩みを解決する糸口が見いだせるのではないかと思っています。

小児科医師

佐藤 詩子
卒年
  • 平成8年東京大学卒
  • 平成16年東京大学大学院卒
卒年
  • 小児科一般
  • 小児内分泌学
  • 小児糖尿病
卒年
  • 日本小児科学会小児科専門医
  • 日本内分泌学会内分泌代謝(小児科)専門医