公益社団法人東京都教職員互助会 三楽病院

部門

整形外科
リハビリテーション室 Rehabilitation

2025.09.04 スタッフコラム

足元 Footの重要性

三楽病院整形外科リハビリテーション室 主任理学療法士の山田郁朗です。

当リハビリテーション室には、「フットコントロールトレーナー」の資格を有するスタッフがおり、ダブルライセンス保持者です。私たちは、足元の環境が身体全体の健康や動作に与える影響を重視しています。足は、立つ・歩く・走るといった日常動作の土台であり、姿勢やバランス、関節の負担にも深く関わっています。

今回は、「フットコントロールトレーナー」という資格の概要と、足元の環境を整えることがなぜ重要なのかについて、皆さまにご紹介いたします。

フットコントロールトレーナー

「フットコントロールトレーナー」は、NPO法人オーソティックソサエティーが認定する専門資格です。足や靴が原因で生じるさまざまな身体の不調やトラブルに対して、医学的根拠に基づき、姿勢や歩行バランスなどの観点から分析を行い、適切な靴のフィッティングやインソール(中敷き)の調整を通じて改善を図る知識と技術を習得したスペシャリストです。

当院では、足の形状や機能に合ったシューズのご紹介・提供を行い、靴の機能と足部の動きが適切にマッチするようサポートしています。このマッチングにより、日常生活における姿勢や動作が改善され、歩行能力の向上や身体にかかるメカニカルストレス(物理的負担)の軽減が期待できます。

さらに、スポーツシーンにおいては、怪我の予防やパフォーマンスの向上にもつながる重要な要素となります。

オーソティックソサエティー公式サイト

足元 Foot 環境の重要性

突然ですが、皆さまはメガネを購入される際に、「自分の視力に合っているかもしれないメガネを、試着せずにネット通販で購入する」という方はいらっしゃるでしょうか?おそらく、大半の方が眼科や眼鏡店で視力を測定し、自分に合ったメガネを選ばれると思います。 “餅は餅屋”という言葉の通り、専門的な測定とフィッティングが必要なものには、専門家の知識と技術が欠かせません。

では、シューズのサイズ選びについてはどうでしょうか? 「少し大きいけれど、デザインが気に入ったから購入した」 「自分は23.5cmだから、ネット通販でも問題ない」 そんな経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

現在のシューズ販売小売店の現場では、足のサイズを正確に測定してくれる店舗は限られており、多くの方が自分の足の長さや幅を誤認したまま購入されているケースがあるのが現状です。

はっきり申し上げます。 シューズは、大きすぎても小さすぎても、身体に負担をかけます。これはメガネと同じで、合わないものを使い続けることで、身体にさまざまな不調を引き起こす可能性があります。

特に女性では、足のトラブルを抱えている方が7〜8割にのぼるとされ、巻き爪、胼胝(たこ)、魚の目、外反母趾、内反小趾、扁平足など、さまざまな問題が見られます。 足は、地面と唯一接触する「身体の土台」です。この土台が崩れると、足部の問題だけでなく、膝痛、腰痛、肩こりなど、上位の関節や筋・筋膜にも影響を及ぼすことがあります。

また、子どもの足は軟骨形成が未熟で、成人よりも非常にデリケートです。そのため、適切でないシューズによって足の形が変形しやすく、成長に悪影響を及ぼす可能性もあります。

まずは、ご自身やご家族の「足長(そくちょう)」「足幅(そくふく)」「足囲(そくい)」といった正確なサイズを知ること。そして、そのサイズに合ったシューズを選ぶことが、健康な身体づくりの第一歩です。

シューズの選択基準

皆さまが一日の中で最も長く履いているシューズは、どのようなものでしょうか? おそらく、職場で使用されているシューズが多く、「奮発して高額で購入した、特別な日にしか履かないシューズ」ではないはずです。

「普段履きに使用するシューズは消耗品だから…」と、安い価格だけで選んだ靴を長時間履いている場合、想像以上に身体への負担がかかっている可能性があります。特に、幼児や未就学児、高齢者など身体機能が繊細な方々にとっては、その影響はより深刻です。さらに、糖尿病や循環障害をお持ちの方では、足の傷から感染症につながるリスクも高まります。

万が一、足元の不適切な環境が原因で怪我をされた場合、格安で購入したシューズに加え、診察料や薬代などがかかり、結果的に高額な負担となることもあります。

もちろん、シューズ選びにおいてはTPO(時・場所・場合)を考慮することが重要ですが、真に「身体に優しい靴」とは、単なるデザイン性ではなく、医学的・生体力学的な根拠に基づいた“科学としてのフットウェア”であるべきだと私たちは考えています。

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