部門
整形外科
リハビリテーション室
Rehabilitation
自分でできる足部機能評価
三楽病院整形外科リハビリテーション室 主任理学療法士の山田郁朗です。
前回までは足のバランスが身体に与える影響や足が機能低下した場合に出現する症状などについて触れさせて頂きました。今回は具体的にご自身の足が歩行をするのに適切な可動性を有しているのかというのを簡易的に確認することができる評価方法をご紹介致します。
歩行周期における足部の役割

人間の二足歩行は、足が床面に接地している「立脚期」と、床面から離れて足を振り出す「遊脚期」に分けられます。 立脚期では、踵から接地し、足底全体が地面に触れることで膝が伸展します。その後、反対側の足が前方に振り出され、接地と同時に踵が持ち上がり、つま先が地面から離れるまで、足圧中心は踵の外側から母趾へと移動していきます。
立脚期の前半では、踵接地時に床からの反力を受け止める必要があるため、足部は柔軟性を持ち、衝撃吸収機能が求められます。これは、前回の記事でもご紹介した足部のアーチ構造による『トラス機構』が担っています。 一方、立脚期の後半では、前方への推進力が必要となり、足部は硬くなりながら母趾へと足圧中心を移動させます。この際、母趾が反ることで『ウィンドラス機構』が働き、足底筋膜の張力を活かして、下腿筋群による推進力を効率的に引き出すことができます。
これらの機構は互いに補完し合い、歩行において極めて重要な役割を果たしています。しかし、立脚前期のみの歩行や、歩幅の小さい歩行が習慣化すると、足部の機能が低下し、姿勢不良や循環機能の低下を引き起こす可能性があります。
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【トラス機構】
足の接地期での荷重応対
足底筋膜緩衝作用 -
【ウィンドラス機構】
足の蹴り出し期での推進力
足底筋膜緊張
足の簡易的機能評価(DOLA JAPAN評価法参考)
以下4つの足の機能評価テストをご紹介します。
正常な歩行を行うための、足首と足趾の可動性・運動性を確認するためのものであり、4つの動作一つでも難しいと、歩行時に足部や他の運動器官にメカニカルストレスが生じている可能性が考えられます。
① ⾜⾸背屈テスト:距腿関節の可動性
⾜⾸が10度反り返ることができますか?
足首の可動性を確認するテストになります。踵を固定した状態で、母趾球の下あたりを持って足首を反らせます。足首より上の下腿の中央線と母趾球までラインのなす角度が10度確保できていないと、立脚の後期で足を反らすことができないため、足のアーチが低下したり、股関節が開いてしまったりします。
② 母趾背屈他動テスト:母趾伸展可動性
母趾が65度反り返ることができますか?
母趾球の下部を固定し、母趾を反り返らせます。母趾球から下のラインと母趾のなす角度が65度以下の場合、立脚後期、踵が上がる時に、母趾への荷重が困難となります。歩行時に母趾までの荷重ができないと、下腿筋の筋出力を発揮することできず、推進力が得られにくくなります。
③ ランジテスト:荷重時の足関節可動性
壁から10cm離れた位置から膝を接地できますか?
平らな壁の前に立ち、前後に足を開いた状態で、前方のつま先を壁から10cm離します。その姿勢から、前足に重心移動し、膝が壁に接触することができるかを検査します。確認したい関節機能は①の検査と同じですが、立って荷重をかけた状態の足部可動性を確認します。
④ 母趾伸展自動テスト:母趾の独立運動性
母趾のみ自力で反り返すことができますか?
両足立位で、他足趾は床面に接地した状態で、母趾だけを反ります。その際に、母趾だけを反ることができない場合は、内側のアーチ低下、足部の変形、母趾が機能できていない可能性が疑われます。
足の簡易テストまとめ
| テスト名 | 目的 | 方法 | 判定基準 |
|---|---|---|---|
| 足首背屈テスト | 距腿関節の可動性 | 踵を固定し母趾球を持って反らす | 10度以上 |
| 母趾背屈テスト | 母趾の可動性 | 母趾球を固定し母趾を反らす | 65度以上 |
| ランジテスト | 荷重時の足首可動性 | 壁から10cm離れた位置で膝を壁に接触 | 接触できるか |
| 母趾伸展テスト | 母趾の独立運動性 | 他趾を床につけたまま母趾だけ反らす | 母趾のみ反れるか |
足圧中心(Center of Pressure:COPの軌跡
歩行時、足にかかる荷重の位置は刻々と変化します。皆様は、歩いているときに足裏の感覚に意識を向けたことがあるでしょうか。
足圧中心(Center of Pressure:COP)とは、足裏と地面との接触面において、床反力(地面から身体に加わる力)が作用する点を指します。COPは地面上に存在し、立位や歩行時のバランス制御を評価する重要な指標です。重心の動きに応じてCOPは常に変化し、身体がバランスを保つための「調整点」として機能します。
通常、COP(Center of Pressure:圧中心)は踵部から始まり、やや小趾側を経由して、下肢の蹴り出しに伴い母趾へと抜けていきます。この軌跡は滑らかで規則的であることが理想とされます。
しかし、足関節や足趾の可動域に制限がある場合、足部のトラス機構やウィンドラス機構が十分に機能せず、COPは足部アーチの内側を通過したり、母趾ではなく第2〜3趾付近を抜けるなど、異常な軌跡を描くことがあります。
その結果、足部の特定部位に過剰な負荷が集中し、胼胝(タコ)や魚の目、巻き爪などの症状が現れる原因となります。さらに、筋活動が不十分であると循環機能にも悪影響を及ぼし、足部の変形を助長する悪循環に陥る可能性があります。
足圧中心の軌跡を適切に評価・修正することは、足部の健康を維持し、障害を予防するうえで極めて重要です。

